イスの“ベース”を支える「WEST EXPRESS 銀河」って何?
……が、その前に少しだけ「WEST EXPRESS 銀河」について触れておかねばならないだろう。
「WEST EXPRESS 銀河」は、簡単に言えばJR西日本が運行している観光列車。とってもお高い豪華観光列車(クルーズトレイン)に対して、比較的お手軽なお値段で昼夜を問わず走るクルーズ列車の旅が楽しめる。117系(国鉄時代の古い車両だ)を改良し、2020年に運行を開始したものだ。走る区間はシーズンごとに変わり、2022年秋から冬にかけては京都・大阪から紀伊半島方面を目指して走っている。
シャワーやらバスルームやら食堂車やらが設えられているようなわけではないが、それでも「WEST EXPRESS 銀河」の車内はなかなかよくできている。
数多くの鉄道車両や駅舎を手がけてきた川西康之氏がデザインを担当。車内にはフリースペースから施錠可能な個室のプレミアムルーム、座席をバタンと倒せばベッドにもなるファーストシート、他にも普通のリクライニングシートからブルートレインを思い起こさせるような2段ベッドまで、とにかくバリエーションに富んでいる。
そして、この「WEST EXPRESS 銀河」の車内で使われている座席やカーペット、テーブルなどを、列車の中のそれから家庭用にアレンジしたものが、「WEST EXPRESS 銀河」オマージュ家具、というわけだ。ざっくり言えば、川西さんがデザインした質のいいインテリアを、さらにアレンジすれば家庭でも使ってもらえるんじゃないか、ということなのだろう、きっと。
百聞は一見にしかずというわけで…
いったいそのオマージュ家具とはどのようなものなのだろうか。百聞は一見にしかずというわけで、オマージュ家具を製造しているというJR西日本テクノスさんを訪れた。
この会社はJR西日本グループで、基本的には鉄道車両の機器製造や保守を担う会社だ。もちろん、家具製造のノウハウなんて持っていなかった。
「ですからね、何度も試作を繰り返してやってきました。私たちも車両に乗せる座席についてはわかっていますが、家庭で使う家具となると……。どのようなものならば受け入れていただけるのか、試行錯誤といったところです」(JR西日本テクノスの担当者)
そうして見せてもらったのは、ソファー(1人掛け・3人掛け)、リビングテーブル、サイドテーブル、スツール、クッション、カーペット。クッションやカーペットは基本的に「WEST EXPRESS 銀河」で使われているものをそのまま。
スツールは「WEST EXPRESS 銀河」のフリースペースで使われているものをアレンジし、ソファーは「WEST EXPRESS 銀河」の座席のデザインをベースにしたものだ。座面に使われている素材は、「WEST EXPRESS 銀河」と同じデザインのモケットである。