秋元さんからも「マリコさんは、そういうの本当に怒るね」と笑われました。紹介もされず、ちゃんとした手続きも手順も踏まず、その場にいる資格のない人がしれっと席に座っていることにまったく我慢ならない私。お勘定への無神経さにたいする怒りもさることながら、いったいどうしてここまで腹が立つのかと考えたら、自分の過去に思い当たります。
若い頃にお世話になった編集者の秋山道男さんから後年、「昔はハヤシさん、距離感がつかめない子で本当にイヤだった」と打ち明けられたことがあります。みんなが飲み会に行こうとする時に、誘われていないのに絶対ついて行こうとしたり……。人間関係に非常に意地汚かったのです。
私のデビュー作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』(1982年)を出した頃ですが、とにかく有名人と仲よくなりたかった時期でした。望まれてもいないのに、芸能人と夜の酒場に行くのが嬉しくてたまらなかった。
ただ、明らかに歓迎されていなかったり、飛行機の中であいさつをしたら露骨に「何アンタ? 関係ないでしょ」という顔をされたこともしょっちゅうでした。無理矢理割り込もうとしているから自業自得なのですが、そのたびに傷ついたものです。
こうした恥ずかしい過去の末に、現在、お座敷が毎晩のようにかかる私がいます。有名人が集う楽しい会食の場にいるのは、そこにいる人が努力して勝ち獲った資格なんだ、と言いたい。――もちろん、過去の自分にも向けて言っているんですけどね。
出た! 「口角上げ女」とは
3、4人以上のメンバーで飲食をする際に、なぜかちゃんと紹介もされず、何も発言せず、口角を上げてニッコリ笑いながら人の話をただ聞いている女性が紛れ込んでいることがあります。
そのような女性を、私は「口角上げ女」と呼んでいます。その場にいる男性のプライベートでの“関係者”なのですが、どうやらみんなに紹介するのは不都合があるらしい。