大手企業では、社員数が多く、事業所が各地に分散し、経営者と社員の「物理的な距離」は大きい。ところが、経営者といっても他の社員と同じような学校を出て、寮や社宅で同じように暮らし、職場で苦労を共にしてきた元同僚。たまたまその中で一番偉くなったものの、「自分と同類」ということで「心理的な距離」はありません。
経営者が表舞台ではシャキッとしていても、「自分と同類」だからプライベートは自分と似たようなものだと、大手企業の社員は知っています。そのため経営者のプライベートが表沙汰になっても、「まあ、そうだろうね」と驚きません。よって影響は限定的です。
一方、中堅・中小企業では、社員も事業所も少なく、経営者と社員の「物理的な距離」は小さい。しかし、中堅・中小企業、とくにオーナー企業では、経営者は裕福な家に生まれ、苦労なく育ち、会社では下働きせず、あっという間に役職が上がっていきます。社員から見ると「異邦人」で、「心理的な距離」は大きい。
中堅・中小企業の社員は、異邦人の今まで知らなかったプライベートを目の当たりにして衝撃を受け、良くも悪くも大きな影響を受けるのでしょう。
経営者はどうあるべきか
では、経営者のプライベートはどうあるべきでしょうか。
経営者に社員など関係者が付いてくるかどうかは、経営者の能力や実績もさることながら、やはり人間性。経営者は、不祥事を起こして人間性を疑われるような事態を絶対に避けなくてはいけません。
ただ、経営者も人の子。好ましくないプライベートの行動があり、それがSNSなどで晒されてしまうリスクはあります。リスクを避けられないとしたら、経営者はどう対処すれば良いのでしょうか。
ここでコンサルタントの筆者がお勧めしたいのが、心理学で言う「自己開示」、つまり強み・弱み・悩みなど自分のありのままをさらけ出すことです。経営者が自己開示をすることによって、相手との「心理的な距離」を縮めることができます。
もっとも、経営者が自分の良い面ばかり自己開示したら、社員との距離が広がってしまい、逆効果。社員を強引に飲み会に誘ったらアルハラ、そこで性的な自己開示をしたらセクハラで訴えられる可能性もあります。
君子危うきに近寄らず――高い地位にいる間は結局、何をするにしても常識的、慎重であることが求められるわけです。
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