ENEOSでは、事業も職場の雰囲気も、事件の前後でまったく変わっていないそうです。
また、週刊文春によって「社長のパパ活」が露呈した横浜ゴムの社員にも取材したところ、「社内にあの件の影響は全くありません」(40代・男性)とのことでした。
ENEOSと横浜ゴムの2社だけでは断定できないものの、大手企業では経営者のプライベートのトラブルぐらいで屋台骨が揺らぐことはなさそうです。
中堅・中小企業では絶大な影響
ただ、中堅・中小企業を取材すると、大手企業とはかなり違った様子が見えてきました。40代の社長が恐喝の容疑で逮捕されたある中堅企業の男性社員は、社内の動揺を次のように語ります。
「もちろん聖人君子とまでは思っていませんでしたが、実直で思いやりがある社長だったので、社員は皆ショックを受けました。『あの社長とは一緒に仕事できない』と退職する女性社員も現れました。社長は辞任しましたが、それから2年経った今も社員の動揺は続いています」
逆に、経営者のプライベートの良い行いが社員に伝わって、会社に良い影響が出るというケースもあります。以下は、ある中小企業の2代目社長に関する女性社員のコメントです。
「やり手だった創業者と違って、今の社長はボーッとしていて頼りなく、社員からの評判は芳しくありませんでした。ところが、その2代目社長が『犬猫の殺処分ゼロ』を目指して週末は精力的に活動しているとわかりました。それ以来、社員や取引先からの社長の好感度は爆上がり。会社の雰囲気もぐっと良くなりました」
中堅・中小企業では、悪い面でも良い面でも、経営者のプライベートは会社に大きな影響を与えるようです。
「大手」と「中小」でなぜ反応が分かれるのか?
大手企業と中堅・中小企業では、経営者のプライベートに対する社員の反応が、どうしてこれほど違うのでしょうか。大きく二つ要因があると思います。
一つは、企業経営に占める経営者の重要度の違いです。大手企業では、事業や組織を運営する仕組みができ上がっているし、人材も豊富なので、経営者の役割は相対的に小さい。それに対して、仕組みがなく人材不足の中堅・中小企業では、経営者の役割が極めて大きい。
もう一つ、経営者と社員の「心理的な距離」が根本的に違うことも、大きな要因になっています。