文春オンライン
「小さい私からも献金を…」旧統一教会信者の両親に育てられた「2世」が語る、“自分が山上容疑者にならなかった”ワケ

「小さい私からも献金を…」旧統一教会信者の両親に育てられた「2世」が語る、“自分が山上容疑者にならなかった”ワケ

『宗教2世』より#2

2022/12/12

──そのほかの社会奉仕活動や集会への参加などの義務はいかがですか?

黒沼 私は一切なかったんです。ただ、ほかの家と違うなっていうのに気付き始めてから、衛星放送で旧統一教会の情報をキャッチする専用のパラボラアンテナが家に設置されたりとか、山のように積み上がった箱の高麗人参とか、大理石の置物みたいなものとかもたくさんありまして。変なものが増えてるなっていう印象がありました。

──なるほど。ほかの信者の方と違って、たとえば選挙活動のときに動員されたりとかいうことはなかったんですか。

ADVERTISEMENT

黒沼 それが私はまったく経験がなくて。まわりにも旧統一教会2世は数人いたんですが、彼らはしっかりと教会に通っていたので、その輪にもなじめなかったです。本来、2世はそういう活動をしなきゃいけないというのを、あとあと知っていくという。

家族で脱会…疑問を抱いたタイミングは?

──いまはご両親も、黒沼さんも脱会されていますね。一緒に脱会したんでしょうか?

黒沼 そうですね。先ほど被害額数十億と言ったんですけれども、やはり父を中心に、教会に対して不信感を抱いて、教会から取り返せる範囲で取り返すように働きかけたので、その動きがあってから、自然にフェードアウトしていったかたちです。

──取り戻した部分もあると。

黒沼 取り戻した分を差し引くと、実際の被害額は数億円だとは思います。

エイト 入信していた時代に返金の交渉をして、その過程で脱会にも至ったっていう。

黒沼 はい、そうですね。

エイト ちょっと珍しい例ですよね。

──これは脱会の前に、疑問を抱くタイミングがどこかであったということですよね。

黒沼 おそらくはあったと思います。

──しかしそれは、やっぱりお父様のことなので、踏み込んで聞くことが難しい。

黒沼 そうですね。時期的には2000年代頭ぐらいだったと思いますね。

──脱会だということになったら、いままであった習慣が、家庭内でパタリとなくなるわけですか?

黒沼 いや、だんだんなくなっていくみたいなかたちでした。父親が絶対的に教義を教えていた側なので、権力を持っていましたね。家庭のなかでもパワーバランスが、どんどんどんどん父親が強くなっていくんですね。なので、もう家庭内礼拝をしないよということになっても、私たち家族は一切、何も言えなかったです。従うしかなかったですね。

──価値観はどうでしょう。ある種のタブーみたいなものもなくなったんですか?

黒沼 それが、教会への不信感はあったけれども、学んだこと、教義は間違っていなかったということで、婚前交渉に否定的であるとかは変わらなかったですね。

──教団から離脱はしたが、教義は残るというような方もいらっしゃるんですね。お父様の場合は、それに近かった。

黒沼 そうですね。母もいまだにそうですね。

あの事件を起こしたのは、自分だったかもしれない

──脱会後は、旧統一教会の話はあんまりされないという話がありました。安倍元首相銃撃事件があったときには、親や誰かと語り合いたいところはあるんじゃないでしょうか?

黒沼 ものすごくありますね。事件を見たときに、あの事件を起こしていたのが私でもおかしくはなかったな、と考えてしまって、自分を重ねてしまっていました。

関連記事