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「小さい私からも献金を…」旧統一教会信者の両親に育てられた「2世」が語る、“自分が山上容疑者にならなかった”ワケ

「小さい私からも献金を…」旧統一教会信者の両親に育てられた「2世」が語る、“自分が山上容疑者にならなかった”ワケ

『宗教2世』より#2

2022/12/12
note

 安倍元首相銃撃事件の容疑者の背景をきっかけに注目を集めるようになった「宗教2世」問題。親の信仰に影響を受けて育った苦しみとは、どのようなものだろうか――。

 TBSラジオ「荻上チキ・Session」パーソナリティであり、一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」代表の荻上チキさんは、自身のラジオ番組の特集「シリーズ・宗教2世」に大幅な増補を加え、さらに1131人の「宗教2世」当事者の声を集めてまとめた本『宗教2世』(太田出版)を11月25日に上梓した。

 ここでは本書より、荻上さんがジャーナリストの鈴木エイトさんとともに、旧統一教会2世の黒沼クロヲさんに話を聞いたラジオ放送の内容の一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目を読む

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◆◆◆

「小さい私からも献金を…」旧統一教会2世と献金

──いま献金の問題がよく指摘されますが、この点はいかがですか?

黒沼 家族全員脱会したのが私が10代後半の頃だったんですが、それまで家庭内礼拝で、小さい私からも献金を集めるんですけど、献金のためのお小遣いが……。

──ええと、ちょっと待ってください。子どもも献金するんですか?

黒沼 そうですね。大きめの貯金箱的なものがありまして。それで献金っていうのをするんだよって教えられるんですよ。それが必要なことなんだよということで、献金のためのお小遣いを渡されて、それを献金するっていう謎の行いがありました。

──一旦お小遣いを渡すけど、献金として回収される。献金することはいいことだという価値観を学習させられるわけですか?

黒沼 私はされてましたね。

──自分のお小遣いは残るんですか?

黒沼 いや。そもそもお小遣い制度があまりなかったので、私の家は。不良2世の私は、献金箱から数百円ちょろまかして駄菓子屋なんかに行ってました。

──献金の学習のための、形式的なものだった。

黒沼 そうですね。ただ、先ほどエイトさんも霊感商法のお話をされていたと思うんですけれども、私の知る限りではかなりの被害額を、一般家庭ではちょっと収まりきらないような額を、うちは抱えていましたね。

──それなりに献金というのを行っていた。

黒沼 そうですね。

©iStock.com

──ちなみに金額はどのくらい?

黒沼 えっと、大体数十億円ですね。

──数十億!

黒沼 数十億。私の推定ではあるんですけれども。そういったことを両親は話してはくれないので。私の家は地主なんですけれども、先ほどおっしゃったように、土地を担保にというかたちだと思うんですが、それぐらい。

エイト 登記情報を調べたら、抵当が付いていたってことですよね。

黒沼 はい。

──なるほど。それだけ献金し続けていると、旧統一教会ではそれなりの地位にはなっていくんじゃないですか?

黒沼 おそらくそうだと思います。なので、本当は実際に教会に行かないと、ちゃんと通ってないじゃないか、っていうふうに言われるはずなんですけれども、うちはその献金があったので、何も言われませんでした。

──例外的に。だから、お家のなかで礼拝するというかたちだったんですね。

黒沼 そうですね。

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