「先ほど弁護士の先生から控訴の連絡を受けました。判決の直後から『おそらく控訴するだろう』とは言われていましたから、覚悟していました」
控訴の事実を知ってまず抱いた疑念は、宮本被告が何に対して「不服」を訴えたのか、という点だ。宮本被告は初公判で「死刑を望みます」と口にする一方で、罪状に関しては黙秘を続け、求刑の日には約50分にわたって検察批判を続けたことさえあった。
宮本被告は死刑にならなかったことが不服なのか、それとも自身の言葉とは裏腹に無罪になることを望んでいたということなのか。控訴理由は現時点では明らかになっていない。
真優子さんを失った遺族は極刑を望んでいたものの、有期刑の中で最長の懲役20年という判決に納得しようと心の折り合いをつけていた。そうした遺族感情を逆撫でするように、被告は控訴の手続きに入った。由美子さんは言う。
「無罪だけは許されんけど、より厳罰な刑になることを祈って控訴審に臨みたいです」
私は真優子さんが「ごまちゃん」を開店する前に働いていたカラオケバー時代から、何度か彼女が働く店に顔を出していた。貧しい家庭に育った彼女は高校を中退したあと、アルバイトをしながら高等学校卒業程度認定試験に合格して通信制の大学に通っていた。どうしてそこまでするのかと聞くと、「スクールカウンセラーになりたい」と話していた。
携帯電話には顧客の特徴を書いたメモが…
2019年頃からは「自分のお店を持ちたい」という夢を語るようになり、カラオケバーの仕事に加えて、昼間には葬儀屋で働くダブルワークに。そして21年1月に、天満駅から徒歩30秒の好立地に「ごまちゃん」を開店した。
仕事熱心で、どんなに親しい人にも敬語で話し、店を後にした客をエレベーター前まで見送っていた。母の由美子さんによると、真優子さんの携帯電話には顧客リストがあり、客の好みや特徴がメモとして残されていたという。