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「改ざんの指示は佐川氏の保身と省内の歓心を買うため行われた。改ざんにより森友学園案件は国会で十分な審議ができなかった。議会制民主主義を破壊し国民主権を機能不全に陥れる悪質な行為だから、最高裁判例にとらわれず佐川氏個人の責任を認めるべきだ」

改ざんの説明や謝罪は「法的義務はない」と納得できない判決に

 市民感覚からすれば実にまっとうな主張だが、判決ではまったく顧みられなかった。最高裁判例を一歩も超えない判断。生越弁護士が語った。

「認諾と同じ、とまでは言いませんけど、その8割くらい怒ってます」

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 国は去年12月、認諾という手続きで裁判を突然終わらせ、賠償金だけ払って真相解明から逃げた。その時に匹敵する怒りだという。では雅子さんは?

「認諾で国から賠償を受けたから、『金さえ払えばいいんだろ』と言われたみたいで、ひどいと思いました」

 さらに判決は、雅子さんが佐川氏に求めていた改ざんの説明や謝罪について「道義上はともかく法的義務はない」と言い切っている。そもそも佐川氏がきちんと真相を説明し謝罪してくれたら、雅子さんが裁判を起こすこともなかった。到底納得できるものではない。

判決の主文

「控訴します」報道陣の取材に明言

 しかも法廷の被告席には誰もいなかった。佐川氏本人だけでなく代理人の弁護士もいない。満席の傍聴席から「おかしいんじゃないの」と声が上がった。

「判決を聞く価値がないと思ってるみたいですよね」

 佐川氏はついに一度も法廷に来ることなく一審は終わった。雅子さんがしみじみ感じていること。それは……、「佐川さんは法律に守られているけど、夫は守ってもらえなかった」。

判決前、金平茂紀さんの取材に答える雅子さん

 これじゃあ同じことが繰り返されてしまう。このままにはしておけない。雅子さんは9月、佐川氏らを新たに虚偽公文書作成罪で東京地検特捜部に告発状を提出した。検察が告発を受理して取り調べにより真実解明を進めてほしいと願うからだ。そして自らもあきらめるわけにいかない。それまで散々迷ってきたが、判決当日に決断。報道陣の取材に「控訴します」と明言した。