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 前半を1点リードで終えると、店内のファンには一様に笑顔が浮かんでいた。前出のクラブでは「よし! シャンパン入れよう!」と大盤振る舞いのファンまで現れた。ハーフタイムに店舗の外で煙草を吸うファンの顔は上気して、初のベスト8への期待をにじませていた。

 この寒さにもかかわらず、半袖の代表ユニフォームを着る都内の大学生は「サイコーです!」と白い息を吐く。

日章旗がセンター街にひるがえったが… Ⓒ文藝春秋 撮影・細尾直人

「予選では予定が会わなくて、今日初めて渋谷に来ることができました。やっぱり渋谷でみんなと応援するのはいいですね。後半もこのまま、日本が勝ってくれると信じています」

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 日本国旗をマントのように羽織った20代の男性6人組も「取材ですか? OKです! NGないんで」上機嫌だった。

「予選からずっと渋谷で応援しています。やっぱり日本の中心で応援の声を届けたいじゃないですか。僕らの中には京都の住んでいるヤツもいるんですが、今日のために東京に来ています。三笘が隠し玉として残っているので、今日は3-0で日本が勝つと思います!」

一進一退の試合展開

 後半10分。クロアチアに同点ゴールを決められるも、テレビを見つめるファンはそれでも声を張り上げて日本を応援していた。しかし、それも延長戦、PK戦と試合が長引くにつれて拳を振り上げて叫ぶ者は少なくなり、祈るように画面を見つめるようになった。

酔客の視線がテレビに注がれていた(読者提供)

 そして、クロアチアの4回目のPKが決り、日本の敗北が決定すると、観客からは「ああ……」と力のないため息が漏れた。約3時間に及ぶ熱戦を見届けたサポーターたちは、ひとり、ふたりと悔しさをにじませた表情で店の外に出て行った。

 店先で煙草をふかしていた20代の男女3人組は「残念です……」と肩を落としていた。

「最後まで日本が勝つと信じていたんですけど……。もう、言葉が出ないです……。日韓戦が見たかったのですが、叶いませんでした。この後のブラジルと韓国の試合を見てから帰ります。韓国を応援します」

 朝から仕事だという会社員の男性もとぼとぼ駅に向かって歩いていた。

朝からの会議が心配な三人 Ⓒ文藝春秋 撮影・松澤和也

「本当はこの後祝い酒を飲む予定だったんですけどね。本当にこの後どうしようかな。今日(6日)は会議があるので、勝ったテンションで乗り切ろうと思っていました。ただ、負けてしまったんで、ぴえんです」