2022年5月に韓国大統領を退任した文在寅(ムン・ジェイン)氏はソウルを離れて隠居生活に入り、7月には安倍晋三元首相が凶弾に倒れた。

 日韓は、2人が政権を率いた当時に「史上最悪」と呼ばれる関係に陥った。「日本で最も嫌われる韓国首脳」と「韓国で最も嫌われる日本首脳」の退場を受け、新たな指導者の下で日韓は「最悪の関係」から脱することができるのか。

2022年5月に発足した韓国の尹錫悦新政権 ©時事通信社

徴用工訴訟にGSOMIA破棄宣言、事態はめまぐるしく動き…

 竹島、慰安婦、歴史教科書……。日韓は常に論争を続けてきた。今日、ことさらに「最悪の関係」が強調されるのは、歴史問題が経済、安全保障にまで悪影響を及ぼす未曾有の事態にあるためだ。

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 発端となったのは18年10月、日本統治時代に戦時徴用された韓国人らが賠償を求めた「徴用工訴訟」で、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じたことだった。日韓が国交正常化に伴い締結した1965年の協定で、両国と国民間の請求権問題は「完全かつ最終的に」解決することで合意していたが、判決は協定の対象に徴用工問題が含まれていないと結論付けた。

「司法判断を尊重せざるを得ない」として韓国政府が問題収拾に消極的な姿勢に終始すると、日本政府は19年7月、韓国の主力産業である半導体分野で材料部品の輸出管理を厳格化。

 韓国側は「『安保上信頼できない』との理由で輸出規制措置を取った日本と、軍事情報の共有は困難だ」(文氏)として、安保協力の象徴である軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄を宣言した。米国の圧力を受け協定効力消滅の直前に維持に転じたが、防衛当局間の交流は著しく減少した。

色んな分野で起こった衝突。解決の糸口は…

 多岐にわたる分野で衝突した日韓の関係改善の糸口はどこにあるのか。答えはシンプルだ。徴用工訴訟で差し押さえられた日本企業資産が「現金化」される事態を未然に防げばいい。企業の抗告手続きなどで時間稼ぎが続くが、司法手続きはすでに最終段階に入っている。