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安倍元総理銃撃事件で浮かび上がる統一教会「2世の受難」と求められる“反カルト法”

安倍元総理銃撃事件で浮かび上がる統一教会「2世の受難」と求められる“反カルト法”

2022/12/28

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会

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 2022年7月8日、参院選応援演説中の安倍晋三元首相(享年67)が公衆の面前で銃撃を受け暗殺された。

 手製の銃で安倍氏を撃ったのは母親が入信している統一教会(世界基督教統一神霊協会/2015年に世界平和統一家庭連合に改称)によって人生を破壊されたと主張する山上徹也容疑者(41)。多額の献金などによって自己破産し家庭が崩壊してもなお、教団の教えを妄信しマインドコントロール下にある母親。一家を崩壊に追い込んだカルト教団への恨みは、教団フロント団体のオンライン集会へビデオメッセージを寄せ教団最高権力者・韓鶴子(ハンハクチヤ)総裁へ最大級の敬意を表した安倍氏への凶弾として暴発した。

安倍晋三元首相が銃撃された現場付近を調べる警察官ら ©時事通信社

事件の「2つの背景」

 事件の背景として報じられたのは大きく分けて2点。

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 まずは統一教会と政治家との関係だ。多くの国会議員に教団との接点が指摘された。根拠となったデータの多くは私のそれまでの調査報道から掘り起こされたものだった。自民党の国会議員を中心として政権中枢の政治家が第2次安倍政権発足以降、この稀代のカルト教団と緊密な関係性を築き裏取引を行っていた疑惑が浮かび上がった。

 そして最も可視化が進んだのが教団の2世に纏わる問題だ。統一教会の2世たちがどのような境遇にあり、深刻な葛藤の中に置かれてきたのかということを多くの人が知ることとなった。山上容疑者自身は教団の信仰を持っていたとは言えず「元2世信者」の括りには入らないが、教団被害者のセカンドジェネレーションという観点においては「2世問題」の範疇にある。