文春オンライン

2023年の論点

安倍元総理銃撃事件で浮かび上がる統一教会「2世の受難」と求められる“反カルト法”

安倍元総理銃撃事件で浮かび上がる統一教会「2世の受難」と求められる“反カルト法”

2022/12/28

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会

note

「祝福2世」と「信仰2世」の明確な区別…想定されていた「2世問題」

 我々、カルト問題に取り組んでいた者にとって2世問題が噴出することはある程度想定されていた。なぜなら、統一教会による霊感商法や偽装勧誘といった社会問題のひとつとして合同結婚式(国際合同祝福結婚式)の問題があったからだ。

 教団の核となる教義においては、アダムとエヴァに嫉妬したルーシェルがエヴァと姦淫したことにより、全ての人類がサタンの血統とされる。その原罪を解消するには様々な「蕩減条件」を積み、神の選んだ相手との祝福結婚式の場で聖酒を飲むことによって血統転換がなされる。そのカップルから生まれた子どものみが原罪のない神の子とされる。

 そんな2世は「祝福2世」と呼ばれ教団内では特別な存在とされる。一方、親が入信する前に生まれていた子どもは信仰2世と呼ばれ明確に区別されてきた。

ADVERTISEMENT

 著名な芸能人などが参加し連日ワイドショーで報じられた1992年の3万双合同結婚式、95年の36万双合同結婚式でカップリングされた信者夫婦が数年後に「家庭出発」し、多くの「神の子」が生まれた。そんな「神の子」たちが思春期を経て成人を迎える時期に「2世問題」が爆発的に増えると見込まれていた。

記者会見中に涙ぐむ旧統一教会の元2世信者、小川さゆりさん(仮名) ©時事通信社

貧困に感情のケア…求められる救済

 多くの統一教会2世の家庭に共通するのは貧困である。親が教団にエンドレスな高額献金を行うためお金がなく、子どもの教育資金にまで手を付けるケースも多々報告されている。

 貧困からいじめに遭うケースも多い。家庭や自身の生活が破綻してもなお、献金を続ける構造自体が常軌を逸しており、「破壊的カルトによるマインドコントロールの問題」だと解る。

 さらに伝道活動などの教団の活動に邁進することによるネグレクトも起こっている。祝福2世を出産後、時を置かずして海外伝道に行かされるケースも多々報告されている。

 この教団に特徴的なタブー(禁忌)が自由な恋愛の禁止だ。教義上、神の選んだ相手と祝福を受ける必要があるため、恋愛感情自体が否定される。人を好きになるという自然な感情を否定され、抑圧されていくのだ。

 そもそも2世たちには「信仰しない自由」がない。生まれながらにして自由な意思決定を侵害されており、親の教育権や監護権と2世たちの基本的人権が対立構造にある。