そこでは僕は、「民でできることは民に」を基本コンセプトとして、税率を抜本的に引き下げ、「官」が過剰な市場介入や支出を行わないことの有効性を改めて説明させてもらった。税率の抜本的な引き下げは、国内投資の拡大や経済の活性化に向けた取り組みの基盤になるものであり、税率の引き下げなくして、国内投資の拡大はない。
その出発点として、世界的に高い個人の最高所得税率は直ちに引き下げるべきだ。
住民税を含む最高所得税率は現在、55%、相続税の最高税率も55%。つまり、稼いだお金の45%分しか手元に残らず、死亡して相続の際に55%分を収めるとすると、単純計算でも手元に残るのは45%分の45%で20.25%分となり、実に最高税率が約80%(≒100%-20.25%)になることと等しい。
さらに、グローバルな人材を集める上で僕が問題だと感じているのが、Exit Tax(国外転出時課税制度)というもの。Exit Taxとは、国外に転出をする際に1億円以上の有価証券等を所有している場合、それらの譲渡等があったものとみなして含み益に所得税が課税されるという制度だ。
この制度は外国籍の人もその対象となっており、5年を超えて滞在すると適用される。日本で働く外国人の社員からすれば、入社前から持っていた資産に対して、5年後に帰国する時に課税され得る。これを理不尽だと感じる人は、日本で働くという選択を躊躇するだろう。優秀な人材が税金の高い国にわざわざ来るはずがないのだから。
投資家が逃げ出す前に
米国では税金の高いカリフォルニアから人材が流出する「ブレインドレイン(頭脳流出)」が起こっており、街も荒廃してきているという。日本ではこれが、国レベルで進んでしまう恐れがあるのではないかと思う。