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「今度、志村さんの番組でお世話になる桑野です」と挨拶したら、志村さんは「……うん、うん」みたいな。なんか、そこではあまり会話がなくて挨拶だけで。「よろしくおねがいします!」と言ってドアを閉めて「はー! 怖いよー!」って(笑)。

「俺、やれるかな」って不安で不安でしかたなかったし、めちゃくちゃ怖かったのを覚えてる。

ーー志村さんは物静かな方だったと聞きますが。

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桑野 そうですね。楽屋で、ずっとコントのことを考えたり、ソウル・ミュージックなんかを聴いてた。音楽を聴いているのも、コントに合う曲を探すためでね。

©三宅史郎/文藝春秋

31歳で大抜擢…背中を押された志村けんの言葉

ーー1989年からは『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ、1986年~)にも、東八郎さんの後を継いで家老役で出演されます。

桑野 『だいじょうぶだぁ』で、爺さんの役をよくやってたんですよ。老け役っていうかね。それもあって師匠が「おまえ、やってみな」と。大御所の方々が東さんの後をやらせてほしいと手をあげてたらしいんですけど、そう言ってくれて。

「やってみな」と言われても、東八郎さんがやってたんだよ。さすがにできないよ。だから師匠に「できません」と言ったら、「桑ちゃんさ、音楽もそうだろ? 最初は誰かのコピーから始めて、自分のものにしていくんだろう。一緒だよ。だから、絶対にやってみろ」って背中を押してくれたの。

 それでも東さんに対して「申し訳ございません!」って気持ちでやってたね。最初の頃は、声とか動きとかが完全に東さんのモノマネになっちゃってる。

©三宅史郎/文藝春秋

 俺が家老になったのって、31歳の時よ(笑)。31歳で家老役ってのも凄いけど、あの『バカ殿』の家老だからね。バラエティに出るようになって2年くらいで、そりゃ怖いよ。

ーーそうした怖さが消えていったのは、いつくらいからでしょう。

桑野 三十数年やってますからね。だんだんとね。その間に志村さんから、いろいろ教えてもらったしね。

ーーどのようなことを教わりました?

桑野 師匠って、あんまりリハーサルをやらないんですよ。「殿と家老のとこ、こういう感じでいこうか」と打ち合わせをして、それをリハなしでいきなり本番でやっちゃうんです。そっちのほうがインパクトがあっていいと。だから、途中でトチっても止めないんですよ。そこから、また笑いが生まれるから。