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「『やってみな』と言われても…」バラエティ歴2年で『バカ殿様』家老役に抜擢…30代だった桑野信義の背中を押した、“師匠・志村けんの言葉”

桑野信義さんインタビュー#3

2022/12/27

genre : エンタメ, 芸能

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 あと、手加減するなとは言われた。師匠の頭をスリッパで叩くシーンがあって、やっぱり相手が相手だけに手加減するよね。そうしたら、後で怒られて。やっぱ本気でいかないと、リアクションを取れないし、そこには上下関係ないからと。

 「なるほど!」と思って、それからズバーンって思いっきり叩いてたら「ちょっと、おまえさぁ……」って何度か怒られたことがある(笑)。

ーー『だいじょうぶだぁ』でバラエティ初進出なわけですから、わからないことだらけですよね。

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桑野 本格的なコントって、やったことなかったからね。師匠のコントって、オチに向かうまではシリアスなんだよね。男女のシリアスなやりとりがあって、最後のオチでドカーンとさせる。そこをわかってない人が出ると、途中で崩して笑いを取ろうとしちゃうの。そういうことがあると、師匠が「違う、それは違うんだよ」って教えてくれる。

©三宅史郎/文藝春秋

 コントというか喜劇に近いというか。緊張と緩和みたいね。だから、本当に役に入ってくれと。初めてコントをやる子が途中で笑わせようとすると、師匠は「違うよ」といって止めてた。俺も何回かやっちゃったことがあって「桑ちゃん、そこはね」って。

師匠・志村けんとの思い出は

ーー志村さんとは、じわじわと打ち解けられたのですか?

桑野 最初はね、収録が夜中に終わったら「家に帰りたい。この緊張から逃れたい」と思ってたの。何回かしてから、師匠に「桑野さんさ、帰りに一緒に飲みにいこうよ」って言ってもらって、フジテレビの前にある飲み屋に誘われたの。それから終わる度に、その店に呼ばれるようになって話ができるようになったね。

©三宅史郎/文藝春秋

ーーそうした夜の活動で、印象に残っているエピソードなどがあれば。

桑野 いっぱいある。ただ、話せる範囲ってのを考えないと(笑)。『だいじょうぶだぁ』の収録が終わると、4時とか明け方なの。で、新宿にある「ひとみ」っていう年中無休の飲み屋に行く。そこのママが、師匠がやってた「ひとみばあさん」のモデルになったひとみさん。朝方に行くと「いらっしゃいませぇ~~」って挨拶に来るの。そこからずーっと飲むの。で、昼の12時から次の仕事があったら10時くらいに「お先に失礼します」っていうね。

ーー桑野さんもお酒に強いですが、志村さんも相当だったそうですね。

桑野 志村さんは強い。というか長いね。ずーっと仕事の話だよ。「今日のコント、あそこはこうしたほうがよかった」なんて話してね。俺と田代君もいるけど、カメラマンもディレクターもいて、ダメ出しをするの。まぁ、俺と田代君はそんなに言われなかったけど。それだけ真面目に番組のことを考えてたんだよね。

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