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 飲んでる席以外でもそうでしたよ。『だいじょうぶだぁ』は月曜日が本番で、水曜日がネタ作りの日でフジテレビの大きな会議室に集まるんですよ。そこに4畳半の畳を敷いて、座るのは師匠、俺、田代君。残りの作家やスタッフは、コの字になって座ってる。で、作家たちが持ってきたネタを師匠が無言でチェックしていくわけ。1時間くらい、みんな無言。やっぱり師匠が話すまで、喋れないもん。そういう空気だったけど、それは本当に最初の頃だけだったね。何年かするうちに、師匠の狙いとか考えがわかるようになったから。

 あとで聞いたら、ドリフがそうだったんだって。いかりや(長介)さんが畳に座って、無言でネタをチェックしていくっていう。

ーー『バカ殿様』では、家臣役で上島竜兵さんが加わりましたよね。「いじられ役が移ってしまってさみしい」と仰っていましたが。

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桑野 そうなの。俺らからすると、墨汁を浴びたりするのって美味しいんだよね。竜ちゃんが出ると、あのキャラと立ち位置があるので、俺だけじゃなくて竜ちゃんがイジられることがある。そうすると楽屋で「ずるいよ、竜ちゃん。あれ、俺んだぞ」「すいません!」みたいなね(笑)。

©三宅史郎/文藝春秋

 竜ちゃんとは、師匠と飲みに行くのを分担してたとこもあったね。師匠と飲むと最後まで付き合ってたけど、俺も体を壊してそんなに飲めなくなったから。そこへ竜ちゃんが入ってくれて「今日、頼むよ」みたいなね。志村さんとは一時期、夫婦みたいに仲良かったもんね。毎晩、麻布十番。

 最近は千鳥の大悟と飲んでたでしょ。師匠に「また、大悟と行くんですか?」って、ちょっとやきもち焼いちゃうときもあった(笑)。

「俺は嫌なんだよね」志村けんに対する、今の想い

ーー志村さんに対しては、心の整理がつかなくてお墓参りには行かれてないそうですね。いまだに行かれていない?

桑野 行ってないですね。ごめんなさい。これは、俺以外にはわからないと思う。どれだけ説明しても、わかってもらえないだろうね。

©三宅史郎/文藝春秋

 だって『だいじょうぶだぁ』の立ち上げの時からご一緒させてもらって、『バカ殿』の家老にしてもらって、最後は『バカ殿』のコントで酒を飲んでるんだよ。俺のなかでは、まだどっかにいるような気がするから認めていない。飲みに行って、まだ帰ってこない感じ。お別れになっちゃったのが現実かもしれないけど、俺は嫌なんだよね。

 三十数年もご一緒したんだもん。三十数年って、すごい年数だよ。

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