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当時25歳の留学生を殺害し食べた…「人食い日本人」と呼ばれた男の“一変”パリ人肉事件・佐川一政という男

当時25歳の留学生を殺害し食べた…「人食い日本人」と呼ばれた男の“一変”パリ人肉事件・佐川一政という男

2022/12/29

genre : ニュース, 社会

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 佐川の同級生だったフランス人学生と話す機会があったが、佐川は同級生に勉強のことを聞いたりレポートのフランス語を見てもらったりすることはよくあったという。

 私は事件直後に取材の手伝いをしたが、日本人の目撃談を聞くと、一人ポツンとカフェで食事していたとか、日本の銀行の支店に毎日のように来ては少額ずつ引き出していたとか、いずれもひどく暗い感じで近づきがたいというものだった。中には黒いぼんやりした藻か苔みたいな感じと表現した人もいる。

 このときの彼は次のように語っていた。

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「孤独だからやったんじゃありません。情欲があって、孤独で増幅されるってことはあったかもしれませんが」

 殺人を悔いていたのは事実である。

「社会の責任とは思いません。個人的なことです。殺したことは、犬畜生にも劣る行為だと思う。まだ客観化できませんが」

「もう会うな」「お前の将来がダメになる。精神鑑定に影響が出ては困る」

 その後、刑務所から40通ほどの手紙をもらうことになるのだが、その中にも再三、こうした悔恨の言葉がでてくる。たとえば「何故あんなやさしい、いい娘を死なせてしまったのかと思うと、何も考えられなくなり、自分がまだ平然と生きていることに恐怖を感じます。獄舎につながれていることが、せめてもの救いです」。

 4回目の面会の時に、私と面会していることが父親に知れ、「もう会うな」といわれたという。「お前の将来がダメになる。精神鑑定に影響が出ては困る」というのだ。

「精神鑑定で黒と出れば精神病院にいけます。そしたら治ったと判断されれば出られる。でも刑務所に入ったらもう出られないでしょう。ゴッホだって精神病院に入ったし。

 ただ、ショック療法とか薬なんかで自分がかえられちゃうかもしれないでしょ。結局僕が僕じゃなくなっちゃうかもしれないでしょ。

 こういうふうに矛盾してるんです。精神病院に行きたいっていうのと行きたくないというのは。本心では迷ってます」

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