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台本を皺くちゃになるくらい読み込んでいた頃も…

――今回演じる主人公の鷲津亨(わしづ・とおる)は息子を瀕死の重傷に追いやった者たちへの復讐に燃える議員秘書という役ですが、現時点でどのように捉えていますか?

草彅 全く掴めていませんよ(笑)。「これぞ“秘書”です」という振る舞いもよく分からないし。僕の場合、ふわっと現場に臨むほうが上手くいくみたいなので、とりあえず台詞を憶えるだけで、あまり難しいことは考えない。あとは監督やスタッフのみなさんや編集を信用してね。

©榎本麻美/文藝春秋

――「役を事前に作り込まない」という姿勢は、いつ頃から確立されたのでしょうか?

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草彅 35歳くらいからかな。それまでは台詞からト書きに至るまで台本が皺くちゃになるくらいしらみつぶしに読み込んでいた。台詞のニュアンスにも神経質で、疑問が湧けば監督に直訴するくらいめちゃくちゃ悩んでいました。でも、結局、現場に行ったらスケジュール変更で全く違うシーンの撮影に、なんてこともよくあったし(笑)。現場の雰囲気を察しながら、その場だけ集中して、監督がOKだったらそれでいいという風に変わっていきましたね。そのほうが肩の力も抜けて、何でも演じ易くなった。

©榎本麻美/文藝春秋

――“現場主義”と言えば、台本よりも稽古場での口立て演出を重視していたつかこうへい(10年逝去)さんが思い出されます。つかさんは『蒲田行進曲』(99年)で主演を務めた草彅さんを「天才」と激賞されていました。

草彅 そうやってマスコミを注目させては役者を上手く乗せていたんですよ(笑)。でも、つかさんは僕の心の中にずっと存在し続けている人。「ふわふわしているくらいが丁度いい」というのもつかさんの影響が大きい。最近、つかさんから言われた言葉を本当によく思い出します。思い出すと言うか、よく会話していて。