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――会話、ですか?

草彅 ふと声が聞こえてくるんですよ。「どうせお前なんか、台本読み込んでも議員秘書になんて見えねえぞ? もっと違うところでアクセル吹かせよ」とか。「政治の事、分かってんのか?」「いや、あんまり」「そうだろ? でもまあ、それぐらいでいいんじゃねえのか?」とか。たまにちょっとだけ褒めてくれたりしてね。

 最近、昔、人から掛けてもらった言葉を思い出すんです。昔の自分はあの言葉をああして捉えていたけど、本当はこういう事を言ってくれていたのかな?とか。取り方によってより深く感じられたり新しい真実に変わっていくのが楽しくて。つかさんにしても、大杉漣(18年逝去)さん、高倉健(14年逝去)さんとの思い出もそうだし。

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©榎本麻美/文藝春秋

「『教えてやっただろ!?』と怒っていらっしゃるかも」

――今回の『罠の戦争』は、過去2作の復讐シリーズでご一緒された大杉漣さんが不在です。どんな大杉さんの姿が思い出されますか?

草彅 撮影の合間、僕にギターの弾き方を教えてくれていた姿かな。「一緒にライブをやりたいね」なんて言い合っていたことを思い出します。

――昨晩、草彅さんと高倉健さんが共演された映画『あなたへ』(12年)を見直し、改めていい映画だなあと感じました。思えばもう公開から10年が経ちました。

草彅 たぶん自分も今の年齢で見直した方が染みる映画だし、あの明るい役と演技はもう出来ないと思うくらいすごく特別な作品でした。健さんからはいろいろな事を学ばせて頂いたというよりも、何だか大きな優しさで包み込んでもらったという感じでしたね。あの作品があったからこそ、次のステップに進めた。自分の転機でしたね。

©榎本麻美/文藝春秋

――かねてから草彅さんは「歌も芝居も本格的なレッスンを受けたことがない」と公言されてきました。

草彅 そうですねえ、ええ。

――しかし、韓国語もギターも気が付くといつの間にか習得されていたような印象でしたし、近年の主演映画『ミッドナイトスワン』(20年)においても難易度の高いトランスジェンダー役を見事に演じられていましたが、その苦労はあまり表には出されないという印象があります。そうした姿勢には、もしかするとシャイな人柄というパブリックイメージで知られ、やはり努力を表に見せないという印象があった大杉さんや高倉さんからの影響が少なからず作用していたのでしょうか?