これまで特定抗争指定暴力団として指定されたのは、いずれも福岡県に拠点がある「道仁会」と「九州誠道会」(現・浪川会)、6代目山口組と神戸山口組の前例がある。今回は3例目だ。
道仁会のケースでは、2006年7月に3代目会長人事をめぐり内部で対立が起きたため、一部のグループが離脱して九州誠道会を結成。その後は対立抗争事件が続発した。約50件の事件が発生し14人が死亡している。対立抗争を阻止しようと、福岡県公安委員会が2012年12月に双方を特定抗争指定暴力団とした。その後、事件の発生は止まっている。
道仁会と九州誠道会は特定抗争指定で事件が止まったが6代目山口組は…
当時、道仁会と九州誠道会の特定抗争指定に携わった警察当局の捜査幹部OBはこう強調していた。
「事務所を使えず定例の会議などが開けなくなったことで、内部でもお互いに疑心暗鬼になり、親分と子分の関係といえども気持ちの上で距離が生まれてしまったようだ。携帯電話などの通信機器が発達しても溝は埋められなかった。次第に組織を離れる幹部も出てきて勢力が縮小して行った。こうしたことも背景にあったのか、抗争事件は止まった」
双方は2013年6月、抗争の終結を宣言。九州誠道会は組織の解散を福岡県警に届け出た。対立抗争は鎮静化したため1年後の2014年6月、指定が解除された。しかし、九州誠道会はその後、浪川会と名称を変更して活動を再開している。14人もの死者を出した対立抗争は抑え込むことが出来たが、警察当局は暴力団を消滅させるまでには至らなかった。
一方、6代目山口組をめぐっては、特定抗争指定暴力団に指定しても抗争事件の発生が止まることはないのが実情だ。今年6月には、神戸山口組組長・井上邦雄の神戸市内の自宅に拳銃で十数発の銃弾が撃ち込まれたほか、幹部の自宅に車両が突入する事件も発生。逮捕されたのはいずれも6代目山口組系の組員らだった。そのため、6代目山口組と神戸山口組の間でも抗争の再燃が危惧されている。
このような前例を踏まえると6代目山口組と池田組の双方を特定抗争指定暴力団に指定しただけでは、事件の発生が絶えるとの保証はなく、警察当局は新たな対立抗争の局面への対処が求められている。(文中敬称略)