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「来年、父が逮捕された年齢になります」39歳になった“アーチャリーと呼ばれた少女”が語る宗教二世への思い

「来年、父が逮捕された年齢になります」39歳になった“アーチャリーと呼ばれた少女”が語る宗教二世への思い

2022/12/28
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 宗教二世が声高に叫ばれ始めたのは、安倍元首相襲撃事件がきっかけでした。政治的にはもっぱら統一教会をいかに解散させるかということに焦点が当たっていますが、これまでに宗教法人法を適用して解散させられたオウム真理教と明覚寺の2件は、いずれも刑事事件を起こして幹部が刑事罰を受けた団体でした。

 しかし、統一教会は幹部が刑事罰を受けたわけではない。「政教分離」の観点から、政治家が特定の宗教にかかわったことこそが本質的な問題であり、政治家の側の問題がより大きいと思っています。

 容疑者の家庭に関しては、宗教以前に母親が子育てできないというネグレクトの問題があるのではないか。姉とはそんな話もしています。自分の子どもを神様からの預かりものと思って、自分の価値観を押し付けてはいけないと律しながら育てる方もいらっしゃる。

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 そうやって子どもの意思を尊重するのか、自分と同一視して思いどおりにならないときに虐待してしまうのか。そこに大きな違いがあると思うんですよね。

 宗教に限ったことではなく同様に、親がギャンブル依存症とかアルコール依存症だと、貧困やネグレクトなどの問題がおき、子どもがつらい目にあう。そういう境遇の子どものために行政が手を差し伸べなければいけないというのは、普遍的な課題としてあると思います。 

 

義務教育を受けることができず

1995年、父が殺人容疑、母がリンチ殺人事件に関与した容疑で立て続けに逮捕されたとき、きょうだいで最年長の長姉が16歳、末弟は1歳、麗華さんは12歳だった。教団で共同生活をしていた出家信者の子ども97人については既に児童相談所などに保護されていたがきょうだいは教団に取り残された。一時、麗華さんは教団の長老会議の座長に、弟2人は2歳と3歳で教祖に祀り上げられた。

 私はずっと学校に行きたいと思っていた。勉強は嫌いだけれど、同年代の子どもたちと遊びたかったんです。でも地元での住民運動を受けて、役所が教団の人たちの住民票を受理することを拒んでいたこともあり、教団内で学校はもう行かなくてもいいのではないかという雰囲気になってしまいました。

 そんな中、両親が逮捕された1995年には、住民票のあった静岡県富士宮市の学校に
行こうと思ったのですが、教育委員会から来ないでくれと頭を下げられ、小学校には通えずに終わりました。だから、9歳になっても平仮名さえまともに読み書きできなかったんです。 

 私の名は「りか」と読みますが、「り」という平仮名は、時々2本の線を繫げて書かれることがある。そうするともう読めなくなってしまった。漢字の「麗華」はもちろん書けませんでした。

 中学校も入学を拒否されたので、私は義務教育を受けることができませんでした。