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 印象的だったのは、親によるDVなど家庭に問題がある子たち同士で、マンションの公園スペースにいつも夜集まっていたという話です。そこで「自分たちの親は大変だよね」と話し合っていたと聞いて「子どもは本当は全部分かってるものだよな」と思いました。思い返せば自分も、高校生の時に親を冷静に見て「こうはならないぞ」って思ってたりしたなと。

 子どもってプライドが高くて、簡単に同情されたくないんだと思います。助けてほしい気持ちはあっても、問題があるように扱われたくなかったり、自分たちの家族を守ってるつもりだったりするんでしょうね。

――それで余計に、家庭内の問題が外から見えづらくなってしまってる?

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水谷 はい。しっかりしていて精神年齢も高い子が多いので、問題がないように見えてしまうみたいですね。成績もいい子が多かったりして。

 工夫に長けているんですよ。漫画にも描きましたが、学校からの書類に親がサインしてくれないから、自分で記入してハンコを押して……察知されないように色々やっているんですよね。

©水谷緑/文藝春秋

共通するのは、“父親の不在”

――漫画を読んでいて一番疑問に思ったのが、ゆいの父親の心理でした。小学生の娘が一人で家事をして、精神疾患を抱えた母親や幼い弟、認知症の祖父の世話までしていて、父親はなぜ放っておくんだろう……と。

水谷 私が取材した当事者の方々に共通していたことの一つは、やっぱり「父親の不在」でした。話を聞くと、母親が出産や育児の過程で精神疾患を発症してる場合が多かったのですが、その頃から夫婦でもっと協力できていたら違ったんじゃないのかなと思ってしまいます。

 漫画の中でも、夫の浮気を信じて疑わない母親がゆいに学校を休ませて、勤め先の会社まで見に行かせるというエピソードを描きました。

©水谷緑/文藝春秋

 これもヤングケアラー当事者の方の実体験がもとになっているのですが、こんなことがあり得るのかと驚きました。きっと父親も困ってはいるものの、慣れてしまってるというか、それが普通になってしまっているんでしょう。

 それから、両親が離婚して、久しぶりに父親と会った時に「俺は今すごい幸せなんだよね」と言われたという方もいました。心の病を抱える母親のケアを担う子どもの辛さを、もはや関係ないことと思っているのかなと切なくなりましたね。