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 近年、トラックやライトバンによる輸送需要を大きく押し上げているのは宅配便の配送だ。

 公益社団法人全日本トラック協会の報告書「日本のトラック輸送産業現状と課題2022」によれば、インターネット通信販売やテレビショッピングの普及に伴って宅配便の取扱個数は年々増加しており、2020年度は約48億個に及んでいる。

 国内マーケットは縮小していくので、宅配便の需要もいずれは萎むが、高齢者の一人暮らしが増えることもあってしばらくは伸び続けそうである。

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 宅配便というのは、「着荷主」の中心が個人であるため、配送時に留守であることも多い。企業の大型倉庫に一度に大量の荷物を納入するような効率的な運び方とは異なり、どうしても手間暇がかかるのだ。必然的に多くのドライバーが必要となる。

 一方で少子高齢化でドライバーのなり手自体は減っているため、宅配にたくさんのドライバーを取られると、宅配以外のドライバーまで確保しづらくなるのだ。

2030年、10億トン以上分の荷物が運べない

 宅配ドライバー不足は需要の伸びだけが要因ではない。輸送頻度の増加が不足を加速させている。荷主企業が消費者の要求にきめ細かく応えるべく、「必要なときに必要なだけ届けてほしい」との注文が多くなったためだ。時間指定配送や当日配送といったサービスの高度化に、より一層輸送能力が追い付けなくなっているのである。

写真はイメージです ©iStock.com

 輸送サービスの高度化の背景には、付加価値に対する企業の考え方の変化がある。性能や品質、価格優位性といった「商品そのものの価値」だけでなく、商品を届ける上での「利便性」までを含めての付加価値向上を考える企業が増えたのだ。

 荷主企業には、必要なタイミングで必要な量だけ届けてもらえれば巨大な在庫や保管スペースを抱えずに済むとの計算もある。運送会社へ支払う経費が多少増えようとも、「配達の利便性」向上で消費者の高評価を得られるメリットやコスト削減効果のほうが大きいということだ。

 一方の運送業界は中小企業が多いという事情もあって、各社とも「発荷主」「着荷主」双方の細かな注文に応えようと必死だ。対応できなければ他社に仕事を奪われるとの危機感は強く、厳しい条件の仕事であっても受注する傾向にある。「便利な社会」を実現するためのしわ寄せが、どんどんドライバーへと向かう構図である。そして、それがドライバーの負担を大きくし、退職者を増やすことにつながっている。