物流の需給バランスが崩れることの弊害は大きい。日本ロジスティクスシステム協会の報告書「ロジスティクスコンセプト2030」は、営業用トラックやライトバンによる輸送について供給量不足が拡大していくと見ている。2015年には需要と供給は約29億2000万トンでバランスがとれていたが、需要と運ぶ能力とのギャップは次第に拡大していく。
2025年には需要が約31億1000万トンなのに対し約22億6000万トンしか供給できず約8億5000万トンが運べない。2030年には約31億7000万トンの需要に対し供給は約20億3000万トンにとどまり、36.0%にあたる約11億4000万トンが運べないというのだ。
多くの製造コストや宣伝費をかけた商品の3割もが計画通りにユーザーの手元に届かないことになれば、荷主企業が受けるダメージは小さくない。
ドライバーが「不人気職種」である理由
構造的な要因とは別に、ドライバーが不足する直接的な理由もある。
人口減少によってなり手の絶対数が少なくなってきていることもあるが、募集しても集まらないのだ。国交省の資料によれば、貨物自動車運転手の有効求人倍率(2021年4月)は1.89で、全職業の0.95のおよそ2倍となっている。要するに“不人気職種”なのだ。
“不人気職種”になったのは、待遇や労働環境が悪いからだ。全日本トラック協会によれば、2021年の年間所得は全産業平均が489万円なのに対し、大型トラックのドライバーは463万円、中小型トラックドライバーは431万円である。しかも待ち時間が多いこともあって労働時間が長くなりがちだ。
2021年の場合、大型トラックが2544時間、中小型は2484時間となっており、全産業平均の2112時間を大きく上回っている。仕事量に対して十分な人数を確保できないので、ドライバー1人あたりが扱う荷物数は増えていく。そこに「待ち時間」の長さも加わって給与に見合わない激務を強いられることになるのである。
女性の就業者が少ないことも、人手不足を加速させている。2020年の女性ドライバーの割合は3.6%と極端に低い。長距離走行や重い荷物を運ぶ「体力的にきつい仕事」というイメージが敬遠材料となっているものと見られる。
思うように新人が入ってこないと、就業者の高齢化が進む。全日本トラック協会は、2021年に道路貨物運送業(トラック運送業と宅配便業)で働いた人の年齢を紹介しているが、30~40代が43.2%で、20代は9.0%と1割に満たない。一方、50代が27.6%、60代以上も17.6%を占めている。
このように、日本の物流は中高年が何とかやり繰りしながら成り立たせているのである。このままなら、老後の生活資金を得るために働き続ける60代後半~70代がドライバーのメイン層となる日も近いかもしれない。