子供たちの国語力を守り、育んでいくことは大人の責任
――日本の国語教育をどう立て直していったらよいのでしょうか。
石井 学校の先生たちはハードな環境におかれていますし、いまや家庭環境も社会の環境も、生きる力となる国語力を育むには逆風になる要因に溢れています。でもお金や予算がそれほどなくても、家庭ですぐできること、公立だろうが私立だろうがすぐに導入できる工夫や本質的な授業の仕方はいろいろあります。同じ文科省のカリキュラムでも形骸化させるか、本質的な学びの場にできるかは指導の仕方ひとつによるところも大きい。
たとえば、いまの小学校の国語の教科書は目配りがきいていて、取材の仕方とかが書いてあります。能動型学習が推奨されていますが、では「取材を体験しましょう」といって、PTA会長のところへ行かせて「何の仕事をしていますか。何が大変ですか」と聞いてまとめさせても、本人はただ言われた通りにやるだけで面白さを感じないでしょう。でも、クラブの仲のいいコーチに初恋の思い出を取材させたらどうか? 保育園時代の先生に自分を保育したときの苦労や楽しさを取材させたらどうか? 子供にしたらもう興味津津だし、たくさんの感情があふれ、取材は能動的になっていくわけです。
同じ課題でも、本当に子供の自主性を導く提示の仕方になっているか、自分で考える練習になっているかを先生や親が見直すだけでも、明日から改善できることは多いはずです。
苦しい時代においても、子供たちの国語力を守り、育んでいくことは大人の責任です。本書では、国語力再生の処方箋となるような、さまざまな最先端かつ本質的な事例を紹介していますが、この問題にかんする国民的議論の契機となり、子供たちの未来を守る助けになることを願ってやみません。
プロフィール
石井光太(いしい・こうた)
1977年東京生まれ。作家。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動をおこなう。著書に『物乞う仏陀』『絶対貧困 世界リアル貧困学講義』『遺体 震災、津波の果てに』『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』『浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち』『原爆 広島を復興させた人びと』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』『格差と分断の社会地図 16歳からの〈日本のリアル〉』など多数。2021年『こどもホスピスの奇跡 短い人生の「最期」をつくる』で新潮ドキュメント賞を受賞。
2022年「シェア部門」BEST5 結果一覧
1位:『ごんぎつね』の読めない小学生たち、恐喝を認識できない女子生徒……石井光太が語る〈いま学校で起こっている〉国語力崩壊の惨状
https://bunshun.jp/articles/-/59661
2位:《内部文書入手》 「統一教会」関連団体幹部が名称変更当時の下村博文文科相に陳情、パーティ券購入
https://bunshun.jp/articles/-/59660
3位:「絶対に捕まらないようにします」元電通“五輪招致のキーマン”への安倍晋三からの直電
https://bunshun.jp/articles/-/59659
4位:「ものすごくアバンギャルドなジャズ、下敷きをガリガリやってるような演奏が…」山下達郎が現在でも愛聴する名盤とは?
https://bunshun.jp/articles/-/59658
5位:「森さんは産経も早稲田も試験を受けずに入ったわけね」五輪汚職だけじゃない…森喜朗85歳の“黒すぎる功績”とは?
https://bunshun.jp/articles/-/59657