稀にですが、五感をフルに稼働させても失言をしてしまうことはあります。そんなときは、懸命に体裁を繕っても、さらに炎上する火種を投下するようなものなので、意固地にならず即座に謝罪します。逆に、自分が悪いことをしていなければ、お客様は神様ではないので、謝ることはまずありません。
これは従業員や後輩との関係でも変わりません。ミスに役職や地位は関係ないので、僕が過ちを犯しとしたら、土下座でも何でもします。
謝罪することにプライドを持ち込んでしまう人も多いですが、そんなことをしたら、会社の顔に泥を塗ることと同じですし、お客様はもちろん、部下や後輩からの信頼も失ってしまいます。命まではとられませんし、まあ、土下座はタダですからね(笑)。
お店を舞踏会に見立てて、ブランド価値を劇的に高める
「ギブ&ギブ」の関係を理解して、足繁くお店に通ってくれるお客様にはマメさが肝心です。なぜなら、僕がお客様に興味や関心を抱かないと、自分に興味なんて持ってもらえない。相手のことを好きにならないと、お客様に好きになってもらえない。僕自身がお金を払ってもいいと思うような接客をしなければ、お客様にお金を使ってもらえない。男女の色恋ではなくて、僕はホストとして嫌われたくなかったし、ホストとして大切にされたかったから、まずは自分からお客様をもてなすという気持ちが強かったからです。
特に、精鋭5人にはプライベートの時間を割いて極上のブランド体験を与えていました。毎日の連絡は当たり前として、出勤前のモーニングやお昼休みのランチを一緒にした後、笑顔でお客様を仕事に送り出したり、仕事で疲れている様子だったら10分でも会う時間をつくってフォローしたりしていました。
このように5人の精鋭部隊に対しては、お店以外の場所での接客を通して、信頼関係を構築していたので、お店ではまったくと言っていいほど接客をしませんでした。お客様も僕のスタイルを理解してくれていたので、僕の接客を受けるためというよりは、売り上げに貢献するため、お金を使いに訪れるという感覚のほうが強かったのかなと思っています。
それに、お客様はヘルプに僕のグチを漏らしつつ、「結局、なんだかんだ応援してあげたくなっちゃうんだよね」という感じで盛り上がって飲むのが好きだったから、むしろ僕が席にいると「邪魔?」みたいな(笑)。でもそれは、お互いの信頼関係が確立している証し。僕はそう解釈していました。
ただ、プライベートでいくら信頼関係を築いているといっても、何度もお店に通っているうちに飽きてしまいます。人生には抑揚が必要なように、お客様の感情を繋ぎ留めるには、時には感情を揺さぶることも必要になります。
飴と鞭の理論で、わざと喧嘩をして嫉妬心を煽って日常から非日常を演出したり、「僕はここまでしたのに、君は……」と、駆け引きを楽しんだり……。
また、実はお客様の間でも「担当ホストにとってNo.1の存在になりたい」という熾烈な争いがあります。だから僕は、売り上げにもっとも貢献してくれているNo.1のお客様に「今日は、他のお客様とアフター行くね」といって嫉妬心を煽ったりしていましたし、逆にそうではないお客様に対しては「一番お金を使ってくれているお客様に誘われたけど、今日はお前ね」と言って期待感を与えたりしてもいました。
なかでも僕が、人間関係のマンネリ化を防ぐために採用している効果絶大な戦略があります。月に一度、ホストクラブ専用の衣装をプレゼントです。詳しく説明させてください。