2021年、それまでの日本記録を大幅に更新する“売上5億2000万”を達成したホスト・降谷まさき氏。建築会社を経営していた一人の男は、8年前に26歳でホスト業界に飛び込み、どんな道を歩んでNo.1になったのか――。

 ここでは、降谷氏が営業から人材育成まで自らの「仕事論」を明かした『日本一「嫌われない男」の億を売る仕事術』(扶桑社)より一部を抜粋。サラリーマンの仕事にも応用できるという、「お客様」の心を掴むテクニックの一部を紹介する。(全2回の2回目/1回目に続く

降矢まさきさん

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お客様に無理をさせずに、お店を満喫する遊び方を提案する

 ホストクラブでの遊び方に関してですが、お酒の力を使って煽りまくって、お客様に無理強いをさせるホストは少なくありません。心の隙間に優しい言葉を雨あられと降り注がれた結果、お客様がホスト沼にどっぷり浸かってしまい、精神的に病んでしまう……という話も耳にしたことがあります。

 ですが、僕は違います。毎月、数万円が予算のお客様もいますし、月に1回しか来られないお客様もいます。

 お客様の環境や状況はまちまちです。だからこそ、「今月はボトルを2本、飲みたい」と言われても、お客様の予算を超えてしまっていたら、「それは難しいから、今月はボトルをやめて、その分を来月に回して、来月に2本一緒に飲もうね」といったような流れで、負担できる範囲内で、最大限にホスト遊びを楽しめる方法をお客様と一緒に考えたり、場合によっては提案したりします。ごり押しする営業スタイルは、お客様を辟易させます。

 口を酸っぱくして言いますが、僕は極上のブランド体験を。お客様はその対価としてお金を。相互が「与える関係」でないといけません。搾取とは違うのです。

 また、「客単価」が高いお客様と出会えるかどうかは、ほとんど運や人徳によって左右されます。ですが、「来店頻度(リピート率)」に関しては、ユニークなしゃべりや高いエンターテインメント性によるところが大きいので、飽きさせない時間と空間を生み出す力がホストには問われます。

 男女のデートでは、無言の時間があったり、退屈な時間があったりとしても、「居心地がいいな」「気遣いのできる人だな」など、全体を好印象にパッケージ化できればデートとしてはおおむね成功と言えるかもしれません。

 しかしホストクラブでは、退屈だと一瞬でもお客様に思われると、次はありません。「また遊びに来たい」と思わせる工夫が求められます。特に僕が意識しているのが、テンポの良い会話です。相談された場合は別ですが、1つの話題を掘り下げるとどうしても話す時間が長くなってしまい、特に女性は退屈と感じやすい。なので、いち話題を1分くらいで切り上げるような感覚で、リズム感のあるトークを展開していきます。

 それでも無言になりそうなときは、ヘルプのホストたちと笑い声で埋めて、とにかく偽りでも「楽しい」「面白い」という空気感を作り出します。感情は伝播するので、この切り札は意外と効果を発揮します。

言い訳はさらなる火種を生む。非があるなら潔く頭を下げる

 会話術の本にはトークの見本が書かれていたりしますが、僕には会話のパターンなんてものはありません。無駄です。そんなのに依存してしまったら、パターンやマニュアルから外れたときに思考が停止してしまいます。そうなると、場が静まり返ってしまい、お客様にとって居心地の悪い空間になってしまう恐れがあります。

 朝に母親と「おはよう」と挨拶を交わした後、自然と会話が続くのと同じで、五感を研ぎ澄ませて会話を生み出していくのが僕の手法です。強いてあげるなら、ヘルプでお客様と会話をするときは、担当するホストの話題を出さずに終始自虐ネタに徹するというくらいです。