「工作室」で働いていた“若者ニート”のこれから
そんな単なるゲームを超越し、年月を積み重ねたエコシステムとなったゲーム・WoWが終了すれば、比較的大きな工作室では売上が8割減となるそう。コロナ騒ぎでないくらい業界激震なわけですよ。
「中国がダメでも海外サーバーでプレイするから仕事は減らないじゃないか」という考えもありますが、回線速度に加え雰囲気や環境、言語、外国サーバーでのルールが異なるため、外国サーバーをゼロから再度利用しようとする人は少数派。原神などの人気ゲームもあるにはあるけれど、WoWほどの成熟したゲーム代行の市場がないため、工作室が別のゲームに鞍替えしてサービスを提供しても生存は難しい。
じゃあ、工作室で働いていた“若者ニート”たちはこれからどうすればいいのか。「ここで心機一転、就職を」とするにも、就職を避けて工作室で働いていた人々の掲示板を見ると、30歳を超える人も少なくない。フォックスコン(鴻海科技集団、電子製品受託生産大手)などの工場でももっと若い人々が求められているので、単純労働の転職も難しい。
WoWが終了し、経験値稼ぎをずっとやっていた、かつて「ゴールドファーマー」と呼ばれた代行プレイヤーが歳を取って食い扶持を無くすのは、異国の話ながらリアリティのある地獄絵図です。煽る人はどこの国でもいるようで、WoWのライブ配信者には「無職になるの?」と残酷な言葉が投げつけられています。
社会人経験がないまま歳をとった彼らは今後、どこを目指すのか。「働きたくないでござる」とばかりに新しいゲームの代行業に鞍替えしたり、動画を配信したりするよりは、中国ならではの驚きの裏ビジネスの下で生き抜いてほしいと思ってやみません。
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