サービス終了が発表された現在も、1日に115〜232万人程度の中国人がWoWで遊んでいると算出されています。オンラインゲームの終了直前には、ゲーム内が過疎化して、ゲームに入っても誰もいないということがありがちなのに、すごくないですか? ツイッターがローンチされた2006年よりも早くローンチされ、未だにオールドユーザーに長く愛されているんですよ。
そしてたくさんのユーザーが遊びながら積み立てたデータが、サービスの終了によって来月には無になってしまう。オンラインサービスはこういうところが恐ろしい。
WoWの「ゲーム代行」で稼ぐ“ニート”の存在
ゴールドファーマーという言葉を知っている読者もいるかもしれません。依頼主からリアルなお金をもらい、代わりにゲーム内のキャラクター育成やアイテム・ゴールド稼ぎをするゲーム代行業者で、中国の農村ではそうしたリアルマネートレード(RMT)が行われているのです。2007年頃、農村家屋に並べられたパソコンで、農村の若者がひたすらゲームを代行する映像が衝撃的で話題となり、多くの人が驚愕したこともありました。
実は、あれは主にWoWのゲーム代行なんですね。それが経済成長した今もずっと行われているんです。だから利用者がたくさんいるという側面があります。
そのゲーム代行を依頼しているクライアントは、当時は20代、今は家庭も仕事も忙しくなった30代のゲーマーです。昔からのルーチンで10年以上WoWで遊んでいる人々が、年齢とともにゲームの時間がどんどん減り、腕も以前ほど落ちてしまった。だから余計にゲーム代行に依頼するのです。ちなみに、ゴールドやアイテム稼ぎといった最もシンプルなゲーム代行は、従業員の誰もができることから値段が安く、1時間10~20元(1元=20円弱)程度で依頼できるのだとか。
そして、実際にプレイを代行する従業員は、主に働きたくないニートです。小都市や農村部の集合住宅の一室に何台ものデスクトップPCと各PCにあてがわれたマルチモニターが設置され、雇われた若者数名が密な部屋でいくつものキャラクターを操作し、ひたすら敵を倒し続ける……。こうした「工作室」と呼ばれる小規模のゲーム代行業者が、中国全土に無数に存在します。顧客チャネルを得て大手となったゲーム代行業者がクライアント依頼を受け、中国全土の工作室に発注します。
どれくらい儲かるかはまちまちですが、ある工作室の月商は5万元、従業員の所得は住み込み食事つきで月3000~5000元とのこと。従業員の賃金と家賃光熱費を差し引くと、利益はせいぜい数千元程度。安定はしているが、それほど儲かるわけでもない。
一国一城の主を目指し、工作室を立ち上げてがっぽり稼ごうという若者もいます。しかしこれにはスキルが必要で、簡単ではない。
すぐに社員が辞めて人材不足になるならいいほうで、工作室の社員が社長のアカウントでログインし、貴重なアイテムを持ち出して逃亡することもあれば、逆にトレーニング代と称して従業員から金を受け取った後社長が夜逃げすることも。人間不信となる工作室の従業員も少なくないようですが、それでも何千もの工作室がサービスを提供し生計を立てています。