実はなかった「県からの指示」
なぜ事業と関係がない県の河川工事を検証条件に加えたのか、県と市に取材した。県は、「検証条件に入れるよう指示はしていません。ただ事業が終わるのと同じ頃、県の河川工事が終わるという話をしただけです。それを検証条件に入れたのは市の判断です」と回答。ではなぜ県の河川工事を持ち出したのかについては、答えなかった。
一方市は「県から提示された将来の河川整備状況を反映したほうが、より丁寧な説明になると考え、条件に反映しました」と回答した。
つまり当初市議会に報告した「県からの指示」はなかったことになる。それにもかかわらずなぜ検証をやり直したのか。その核心の部分を、市は答えなかった。ただ一つわかったのは、4月に市のおかしな動きを知った県が、市に助け舟を出したということだった。
なぜ検証をやり直すのか、明確な理由が示されないまま新たなシミュレーションは進み、8月19~21日、検証結果を発表する市民説明会が開かれた。
今回は千葉県から都市計画課、河川整備課なども出席したが、事業主である組合と、その業務代行者である(株)フジタからは誰も出席しなかった。市が呼ばなかったのだという。市長も自ら最重要政策と位置付けた町づくりであるにもかかわらず、一度も顔を出すことはなかった。
河川工事の開始時期は明言されず
検証結果は3つの雨量(10年に一度、50年に一度、1000年に一度の規模)のいずれにおいても、「おおむね浸水深は軽減する」というものだった。前述したように今回の検証条件には、盛り土をふくむ海老川上流地区の造成工事に加え、県が行う2つの大規模河川工事が入っている。
当然多くの市民の質問は県の河川工事に向けられた。「県の工事はいつ始まって、いつ終わるのか」という問いに、河川整備課は、「(船橋市の)新しい町づくりが終了する2034年ごろまでには終わるようにしたい」と回答。しかし開始時期については一度も答えなかった。
また担当者は、県の工事はこの事業のために行われるものではないことを、繰り返し口にした。「そんな不確実な工事を何で検証条件に入れさせたのか」と市民が県に迫るシーンも見られたが、県は答えなかった。