結局、7カ月かけて行われた2回の検証は、組合とフジタに「事業は安全」というお墨付きを与えるために行われたようなものだった。検証にかかった費用721万6千円。緊縮財政を進めるなか、適切な出費といえるか疑問が残る。
被災が予想される市民への補償もなし
12月半ば、洪水の検証の結果、被災がひどくなるとされた夏見7丁目を歩いた。4月に被災の危険性について情報提供があった「川の西側」の一部でもある。しかし住民は誰もその事実を知らず、「説明も補償の話も聞いていません」と一様に顔を曇らせる。夏見以外のエリアでは、グループホームの浸水深増加がわかっている。
市は県の大規模河川工事の結果、海老川下流域の被害はおおむね軽減すると説明するが、県の工事をしてもなお、被災がひどくなるエリアが出ることには口をつぐむ。8月の市の洪水説明会の資料に書かれた「被災がひどくなるエリアへの対応」も、説明会後4カ月たった今も、市と組合の間で協議されないまま工事が進んでいる。
被災者が出る可能性がある土地開発の責任は、誰にあるのだろう。筆者の取材に市は「組合施行だから組合に責任がある」と言い、伊藤英彦組合理事長は「この話は市長がもって来たから、市に言ってくれ」と言う。県も「洪水の原因はいろいろだから、一概に県が責任を問われることはない」と言い、3者が責任を押し付け合っている状態だ。その中で置き去りにされているのが市民の安全である。
しかしこの大豪雨時代、確実に言えるのは、行政の責任である。嘉田由紀子参議院議員の言葉を借りるまでもなく、この危険な事業を認可した責任と、「人の命を守る」ために行政が行うべきことを、市長と知事は自覚するべきだろう。