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《年収上限を1億円に?》成田悠輔と斎藤幸平が示した「欲望と嫉妬」の資本主義からの脱出口

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 東京大学准教授の斎藤幸平さんと、イェール大学助教授の成田悠輔さんによる文藝春秋ウェビナーでの対談「日本はゲームのルールを変えられるか?」が、2022年11月27日に開催されました。その議論の一部をテキスト化した記事を公開します。

 

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プライベートジェットを禁止する?

成田 斎藤さんの議論を引き継ぐと、僕はもっと根本的な変革が必要なんじゃないかと思っていて。実は、「資本主義の再デザイン」に関しては、斎藤さんよりもぼくのほうがむしろより根本的な改造が必要だと思っているのではないかという予感がある。

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斎藤 というと?

成田 斎藤さんが言っていたようなプライベートジェットを禁止する、年収上限を1億円にするといった制限では、噴出する欲望を無理やりおさえているだけで、人間の欲望を根本的に作り変えることにはなりませんよね。

 それだけでは、例えば「貨幣」や「資本」といった制度によって作り出されている、単純化された人工的な欲望は変わらない。それを変えるためには人間の欲望を計る装置の側を変えないとダメなんじゃないかと思うんですよ。

 具体的には貨幣がない経済の構想とか、そういうことを最近は考えています。

斎藤 おお! 資本主義的な領域の考察に入っているわけですね。

成田 そうなんですよ。貨幣とは何なのかという問題について考えていて。貨幣の一側面というのは、それぞれの人が過去にどんな経済活動をしてきたかという歴史や来歴をある意味で単純化された荒いかたちで集約したものと考えられます。

 過去に人の役に立つことをしたり、人が欲しいと思うものを作ってきた人はその対価としてお金がもらえる。お金をたくさん持っている人というのは何か良いことをやってきたに違いないと世間から思われる。だから、お金持ちのことをみんな尊敬したり嫉妬したりするんだと思うんですよ。