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 東京国立博物館をはじめ、国立西洋美術館や東京都美術館、上野の森美術館など、錚々たるミュージアムが集積する上野の一角に、東京藝大のキャンパスがある。日本近代洋画の巨匠と呼ばれ、東京藝大の前身である東京美術学校の指導者でもあった黒田清輝の記念館に近接しており、道を挟んだ両側に、美術学部と音楽学部がそれぞれ位置している。

 美術学部構内の最奥にあるのが、「彫刻棟」と呼ばれる彫刻科の建物。彫刻科では毎年20人の1年生を迎えるが、学科を挙げての恒例行事としておこなわれているのが、新入生歓迎会だ。

「今はコロナで中止されていますが、それまでは毎年ありました。それがすごいテリブルで……」

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 上原さんは取材時、まだ20代。たった数年前の新歓で新入生だった上原さんの心を打ち砕いた「テリブル」(酷い)なこととは何だったのだろうか。

 彫刻棟にはアトリエが備えられており、体育館のように天井が高く、大型の彫刻でも設置できるようなスペースになっている。普段は仕切りがあるが、新歓のときはそれを取っ払い、学生らが全員入れるように空間がセットされる。

 アトリエの前方にはステージが用意され、教授陣には「観覧席」が設けられ、学生たちはステージと教授たちの間に置かれた低いテーブルの前に座るというスタイルがお決まりなのだという。

あまりに性的で、ありえない新入生歓迎会

 新入生を迎えるための会に、なぜステージがあるのか。

「彫刻科の新歓では毎年、新入生は全員、一発芸をしないといけないんです。一発芸は大体、セクシャルなもので、それも男性が喜ぶようなものです。たとえば、男子学生が音楽に合わせて一枚ずつ着ている服を脱いでいくのですが、服の下に何枚もパンツを履いてたり……。女子学生はレオタードやスクール水着など、できるだけ身体が露出するような衣装を身につけたり、亀甲縛りをした女子学生もいました。ショックでした」

写真はイメージです ©getty

 大学生の新歓にふさわしくないワードが飛び出して驚き、思わず「亀甲縛りとは、SMプレイでみるあれですか」と確認してしまった。

「はい。SMのあれです。私たちのときは、グループで一発芸をすることは許されなくて、1人ずつやらされました」

 上原さんも、身体のラインがはっきり出るような衣装を着て、モノマネの一発芸を披露させられた。ショックを受ける上原さんに、さらに追い討ちをかけたのは、一発芸のあと、司会をしていた3年の男子学生から、胸のサイズを聞かれたことだった。すでにお酒が入り、酔っていた男子学生の言葉に、多くの学生が笑っていた。