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インスタ開設で「絶望」から「応援」へ

 遡れば、2022年10月頃は猛烈な「寂しさ」が勝っていた。初の東京ドーム公演が発表されたのには諸手を挙げて喜んだが、何せ12年目でやっと叶った念願の夢だ。ジャニーズの中で飛び抜けて早くデビューした彼らが、飛び抜けて遅くたどり着いた目標の地。ならば5人で立ってほしい。マリウス葉の健康を第一に願いながらも、同時にそう祈ったファンは多かっただろう。だからこそ公式サイトで「マリウス葉は出演しない」旨の注意書きが出たときは、SNSではガックリモードが漂った。私も「このタイミングで揃わないのは惜しい」と思ってしまった。

 ところが、ドームツアーが終了し、マリウス卒業発表直後から風向きがガラリと変わった。5人が“変えた”。5日間、怒涛の如くセクゾの卒活が始まる。

実はマリウスがドーム全公演を観覧

 インスタを開設し、懐かしの画像や卒業旅行の様子までアップ。インスタライブでは、実はマリウス葉がドーム全公演を観覧し、キャラクター「セクベア」の声でライブ前のMCを担当していたことが明かされた。「ドームは5人で立ってほしかった」という寂しさまで、一気に回収してきたのだ。くっ、まさにカラクリだらけのテンダネス! 繰り出される種明かしに、ファンへの強い想いと、マリウス葉を意地でも前向きに旅立たせようという凄まじい愛情と気迫を感じた。

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 卒業までの流れは完璧に計算され、インスタライブでは何の準備も台本もなくひたすら自由、というギャップもよかった。

「NOT FOUND」

「Sexy ZoneのQrzone」(1月9日放送)では、佐藤勝利が、インスタライブについて、こんなことを言っている。

「5人が、それぞれその瞬間思ったことでいいじゃん。それってステキじゃないですか。それで楽しいって最高じゃないですか」

 もし10周年で東京ドームの夢が叶っていたら、マリウスが間に合わず、本当に4人のドーム公演となっていただろう。そして卒業も違う形になっていたはず。もっと早くインスタを開設していたら、人気にも気合にもばらつきがあり、ここまでクリエイティブかつエモーショナルな内容にならなかっただろう。タイミングはまさに「今」だったのだ。

「自分たちほど、『満を持して』って言葉がしっくりくるグループもいないでしょ?」

 中島健人には、「日経エンタテインメント!」2月号のロングインタビューで、こんな言葉がある。

「自分たちほど、『満を持して』って言葉がしっくりくるグループもいないでしょ?」

「non-no」(2023年3月号、特別版表紙)

 彼らがアップしたマリウス卒業までのインスタは、「アイドルがメンバーの卒業を発信する」というより「末っ子が自立して外国に住むので、家族が時間を惜しむように思い出をつくり、大切な人と共有している」という感じである。4人の兄たちが、エールと寂しさをストレートに伝え、末っ子マリウスがいっぱい甘えていっぱい愛を返す。なかでも寂しさを全開にし、時には今年の干支・ウサギのような目になっている菊池風磨の姿にもらい泣きである。その姿は完全に子を心配し、また誇らしく思う母であった。

 見ているこちらも家族の一人の気分になるようなアットホーム感は、マリウス卒業後も維持され、「好きなんだよ、マジで!」と叫びながら毎日何十回も観てしまうファンも多いと漏れ聞く。このインスタが沼の入り口となった人も多いようだ。