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3歳で「ゆりかご」に預けられた男性(19)が、生い立ちを公表した理由「好奇の目に晒されないよう、ずっと家族の秘密にしていた」

宮津航一さんインタビュー#1

genre : ライフ, 社会

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里子のことは家族だけの秘密に

――「ゆりかご」のことは宮津家の秘密にしてきたそうですが、周りの方にはなんと説明をされていたのでしょうか。

宮津 宮津家は里親として保護者と暮らせない子どもを養育している「宮津ファミリーホーム」を運営していたので、友達から「宮津も里子なんじゃないの?」と聞かれることはありました。

 一度、宮津家に同級生の里子が来て、一緒に学校に通う期間があったんです。「宮津も〇〇と一緒で里子だよね?」と聞かれた時に、「俺は違う。宮津家の子だよ」って否定したことがあって。今考えるとすごく申し訳なかったなと思うんですけど、やっぱり複雑な気持ちもあって隠していましたね。里子だと知られたら友達との関係が変わるんじゃないかという不安がありました。

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――実際にこれまでに「ゆりかご」出身であることで偏見に晒されたことはあるのでしょうか。

宮津 小学校低学年の時、帰り道にハンディキャップを持った子をいじめていた同級生とトラブルになったことがあって。これ以上いじめを続けるなら君と一緒に帰らないよと言って、別々に帰宅したらその子が僕にいじめられたと親に話したみたいで、その親から私の両親に電話があったんです。

親がいない子どもへの偏見

 その電話の中で、最後に向こうの母親が「航一くんは親がおらんけんそういうことするんでしょ」って言ったのを聞いてショックでした。やっぱり社会の人はそういうふうに私のことを見ているんだなと改めて感じた時でした。

預けられてすぐの頃の航一さんと両親 写真=本人提供

 でも、いつも穏やかで静かな母が涙を流しながら、「うちの子はそんなことありません」って味方をしてくれて。その言葉に救われたのを覚えています。

――小学校低学年で社会の偏見を目の当たりにしたんですね。そこでやはり隠さないといけないと決心されたということでしょうか。

宮津 そうですね。やっぱり親がいない子どもへの偏見はあるので、成人するまでは家族だけの秘密にしようと約束しました。

 親がいない子どもは不幸だという偏見はやっぱりありますし、小学生だと多感な時期なので不用意な言葉で傷つかないように周囲がケアすることも必要かと思います。

3歳で「ゆりかご」に預けられた男性(19)が、生い立ちを公表した理由「好奇の目に晒されないよう、ずっと家族の秘密にしていた」

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