ワインレッドのスーツに黄色く染めた短髪。2022年にスポーツ誌「Number」のインタビューに応じた橋本容疑者は現役時代を彷彿とさせる将棋棋士らしからぬ格好で誌面を飾っている。公の場で橋本容疑者が言葉を発した最後の機会だったと思われる。取材者に対して「イカつめの格好でいきますね」と自ら提案したというファッションからは、現役時代と変わらないサービス精神旺盛な性格がうかがえる。
「面白いんですかね?」告白していた将棋への複雑な感情
引退後の心境を語ったインタビューでは、「全然(対局を)観ていないですね」「(現役の棋士は)相変わらず藤井さんの将棋をべた褒めしているだけで、(中略)面白いんですかね?」など、将棋に対する複雑な想いが語られているものの、事件を予兆させるような言動は無い。
橋本崇載容疑者は、1994年に奨励会に入会。2001年にプロ入りを果たし、2012年の順位戦では最高位の名人への挑戦権を争うクラスのA級入りを果たす。かの羽生善治に勝利したこともあるが、橋本が人気を博したのはその実力だけではなかった。
「まじめな風貌の人が多い将棋界において、橋本八段はパンチパーマの金髪に派手な色の着物に身を包み、直截な物言いをする“棋界の異端児”でした。ただ、派手な見た目に反して、将棋はじっくり受けて反撃の機会をうかがう渋い棋風で知られていました。2015年には“二歩”という基本的な反則負けをして“二歩の人”として将棋ファン以外にも名を知られることになりました」(将棋ライター)
しかし、2021年に38歳という棋士としては異例の若さで突如引退を表明する。理由は“一身上の都合”としか公表されていなかったが、その裏には元妻との子どもの親権をめぐるトラブルがあったという。橋本容疑者の知人が声を潜めて語る。
元妻との離婚と子供の“連れ去り”
「橋本さんは2017年に結婚をしているのですが、2019年に奥さんが突如家を出てしまったんです。その時に子どもを連れていってしまったようで、それ以降、橋本さんは子どもと会いたくても会えない状況が続いていたようです。橋本さんは『連れ去りだ』と強く反発し、結局親権をめぐるトラブルに発展してしまいました。子どもと会わせてもらえない橋本さんは不満を募らせていました」
引退後のインタビューで橋本容疑者はトラブルの影響で対局に集中できず、自分の手番が回ってきたことに気づかないこともあったと語っている。突然の引退もこういった将棋に集中できない状況が続いていたことが原因だと告白していた。