日本の民法では離婚が成立した場合、どちらか片方の親のみが親権を持つ「単独親権」制度が採用されている。また、親権には「母親優先」や「現状維持」といった原則がある。母親が子供を連れ去った橋本容疑者のケースでは、元妻に親権が認められた。
「共同親権」活動に熱を上げていた
「橋本さんは引退を表明して間もなく共同親権を呼びかける運動を始めました。『子どもの連れ去りは犯罪だ』とかなり強い口調で演説していましたね。共同親権推進派の国会議員と雑誌で対談したり、講演会の講師として登壇することもあったようです。当時からTwitterでも連れ去りのことを呟いていたのですが、あまりに攻撃的な物言いに反感を覚える人が多かったのも事実です」(将棋ライター)
離婚した夫婦が2人とも子どもの教育に携われるように共同親権を主張する声は少なくない。しかし、DV加害者の付きまとい行為などの問題点も指摘され、反対意見も根強い。橋本容疑者も家を出た元妻がDVの被害を訴えていたことを「デイリー新潮」の取材で明かしている(本人はDVについて否定している)。
現役時代から相変わらずの“異端児”ぶりをSNSでも発揮していた橋本容疑者。しかし、普段の容疑者はいたって落ち着いた様子だったようだ。橋本容疑者が問題のツイートをする直前に、彼が生活の拠点としていた福岡市内で会っていたという知人男性は当時の様子をこう語る。
移り住んだ福岡を気に入っていたが…
「橋本さんの様子はいたって落ち着いていました。引退直後はうつ病のような状況だったと聞いていたのですが、会った時には『福岡は物価も安いし、食べるものもおいしい。最近はもっぱら食べ歩くのが楽しみだ』と元気な笑顔を見せてくれました。
もちろん、“連れ去り”のことも話題に上がりました。『元妻にはすべてを奪われた。自分と同じように連れ去りで苦しんでいる人を知っている。自殺した人もいるんだ。民法を改正しないとだめなんだ』と現状に対する不満を口にしていました。ただ、口調が強くなることもなく淡々と話していましたね。だからこそ、あの後に逮捕されるような投稿をするなんて想像もできませんでした……」
先述の「Number」のインタビューにおいて、橋本容疑者は将棋講座の復活の意思を聞かれて、こう答えている。
「将棋を辞めた時のことがフラッシュバックするので、なかなかキツいんですよ。僕も泣きながら将棋盤を捨てたので」
元妻を殺人鬼となじるのは、断腸の思いで将棋盤を捨てたあとにするべきことだったのか。