文春オンライン

てんきち母ちゃんがナンバー1料理ブロガーになるまで

『てんきち母ちゃんの あるものだけで 10分作りおき』の井上かなえさん、成功の秘訣

note

 インスタやブログで人気をとる“料理上手さん”の中でも、料理研究家や料理ブロガーとして活躍できる天才たちは、ほんの一握り。「てんきち母ちゃん」として発信中の井上かなえさんはライブドアブログ料理カテゴリーで1位の読者を持ち、出版されたレシピ本はすでに15冊! 料理ブロガーとして認められるには、どうすればいいの? と、聞きながら、今年ブレイクの予感がするレシピを教えてもらった。

◆◆◆

子どものころから食べ物への執着がすごくて

『てんきち母ちゃんの あるものだけで 10分作りおき』(井上かなえ 著)

――料理ブロガーとして長く活躍されていますが、もともと、お料理は好きだったんですか?

ADVERTISEMENT

てんきち母ちゃん(以下てんきち母) いえ、お料理を本格的に始めたのは実は結婚してからなんです。でも、食への興味は赤ちゃんの頃からすごかったらしくて(笑)。

――赤ちゃんの頃から?

てんきち母 母の話によると、まだよちよち歩きの頃、勝手にテーブルの上によじ登って大人用の辛い漬物をわしづかみにして頬張っていて、度肝を抜かれたそうです。とにかく食べ物への執着がすごくて、今でも子どものころにあんなの食べた、こんなの食べた、誰々が作ってくれたあの料理が好きだったなど、かなり詳細に思い出しては家族をびっくりさせています。

 自分で実験的にいろいろ作るのも好きで、小学生の頃は学校の家庭科クラブにも入っていたのですが、子どものころはどちらかというとお菓子ばかり作っていました。

―――ご結婚されてから料理を始めて、すぐ、うまくできました?

©文藝春秋

てんきち母 ほとんど何も料理ができないままで結婚したので、最初はすべてが実験でした。

 でも毎日自由に好きな食材を買ってきて、それを自分の好きなように料理できるっていうのが本当に楽しかった! たま~に適当にイメージだけで作って失敗することもありましたが、オットは何も言わず食べてくれていました。実は、オットは結婚後10キロ以上痩せたので、当時は義母にだいぶ心配されました。「まさか、鬼嫁に……??と」(笑)。

 本当は独身の頃は一人暮らしでめちゃくちゃだった食生活が、結婚後に健康的でバランスよくなり自然に痩せただけなんですが(笑)。

スタートはクックパッド

――2005年に料理ブログを始められたんですよね? かなり早いですよね。 

てんきち母 育児休暇中に(次女が1歳になる直前くらい)、たまたまクックパッドを知り、これは面白そう! と早速登録したんです。「自分が撮った料理写真付きで自分のレシピをネットに載せられる」というのが面白くて、それまで地道にノートに書くしかなかった自分のレシピを、パソコンの向こうの見知らぬどなたかが観てくださったり、さらには参考にして作ってくださるのが楽しくて大ハマりしました。

――クックパッドは前身が1998年に始まっていたそうですが、最初はクックパッドの1ユーザーだったんですね。

てんきち母 はい。投稿するうちに、興味を持っていただくためには、まずは写真が美味しそうじゃないとダメなんだと気づいたり、料理の背景にあるエピソードとかわたし自身についてももっと書いたほうがいいのかもとか、思い始め……。当時は「てんきちの母ちゃん」という名前で1ユーザーとしてクックパッドを利用していたんですが、いろんな料理コンテストに応募したりして賞を頂いたりしているうちに、そのころちょうど流行り始めた「ブログ」というツールを知り、クックパッドを卒業してブログに移ったのです。もともと文章を書くのが好きだったので、レシピだけでなく、育児日記も入れて。これは遠くに住んでいる母や妹への近況報告としての意味もありました。

 今ではブログをきっかけとして大好きな料理が仕事となり、レシピ本を出版させていただいたり、クックパッドの本社キッチンスタジオで、仕事として企業さんの商材などを使って料理を作らせていただいたりしているので、そう考えると面白い人生だな~と思います。

©文藝春秋