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てんきち母ちゃんがナンバー1料理ブロガーになるまで

『てんきち母ちゃんの あるものだけで 10分作りおき』の井上かなえさん、成功の秘訣

note

おもろいかどうか? 最初の認定者はてんきちくん

―――ブログを始められた頃は、まだお子さんたちも小さかったですね?

てんきち母 そうですね。長男てんきちは小学生でしたが、「これはよく書けた! おもろい!」とわたしが自分で気に入った記事(主に子どもたち3人のことを面白おかしく冷静に観察した日記)は、「どうや? おもろいやろ?」みたいな感じで(笑)読ませていました。

 わたしも長男も読書好きで、小説などは共有して読んでいるのですが、その長男が喜んで読んでくれるときは、認めて貰えた! とちょっと嬉しかったものです。

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©文藝春秋

――お嬢さんたちはもっと小さかったんですね。

てんきち母 小さいころから、家の本棚に並んでいる初期のレシピ本(『てんきち母ちゃんちの毎日ごはん』1~3)をみていたので、そこに載っている自分たちの昔のエピソードを読み、母さんがどんな文章を書くのか知っていたとは思います。

 今では、長女は高校生、次女も中学生になり、母さんのブログをお友達登録しているので、更新のたびに自分のスマホでチェックしているようです(笑)。

 特に長女なーさんは、暇なときに自分のカテゴリーの記事を小さいころのものから順に読んでいるそうで、こないだも1人で大爆笑していました(自分が小学生のころの話で、町内にある図書館にさえ1人で行けないくらい方向音痴の心配性だっていう内容)。

――小学生だったてんきちくんも今年は大学を卒業ですよね。そんな長い間にわたって、人気ブログを続けてこられる秘訣は何なのでしょう?

てんきち母 そうですね。一時、ブログの目的を見失っていたことがあり、それが自分の中でちょっともやもやした時期でした。自分の料理が、家族のためではなく、ブログのための料理になってしまっていたのです。「見てくれの良い料理じゃなくても、品数が少なくても、家族のために作った料理を正直に載せなければ、それは嘘だな」と気づいて、軌道修正しました。

 また、誰も傷つかない文章を書くのも結構大変です。初めのころは手探りで、これほどまでにいろんな人が読んでいるとも意識せずに書いていたので、たくさん失敗もしました。コメント欄でいっぱい怒られましたし、今でいう「炎上」もしました。

 それ以来、いろんな角度から読んで、もしかしたらこの書き方はどこかの誰かを傷つけてしまうかもしれないというものは絶対に書かないように気を付けています。たまに、それでも愚痴りたくなるときは、それを自虐ネタにして記事にし、すっきりしています(笑)。

嬉しかったことは「関ジャニの番組に呼んでもらえた」こと

――逆にブログを続けていらっしゃる中で一番、嬉しかったことは?

てんきち母 関ジャニの番組に呼んでもらえたことかな(笑)。あとでオンエアをみたら、だいぶニヤついていて自分にドン引きしました。はずかしい!

――2018年、これが来るかなと思う食べ物とか料理ってありますか?

てんきち母 個人的に注目している食材は、実山椒や山椒の葉、花椒(ホアジャオ)などですね。わたしは6月ごろに1年分の実山椒を茹でて冷凍保存したり醤油煮、オイル漬け、醤油漬けなどにしてしまうんですが、もっと市販の使いやすい実山椒が安く商品として出回るといいなと。今もあるにはあるけどちょっとお高いので。花椒はスパイスとして調味料コーナーにも売っているので、もっと流行るといいなぁと思います。

©文藝春秋

――気になってる調理法などは何かありますか?

てんきち母 そろそろ低温調理かな。10年前にアメリカではじめて知った低温調理ですが、レストランなどではポピュラーな調理法として日本でも定着してきました。しかしまだ家庭ではなかなか温度管理が難しくて失敗しがち。低温調理器具を新たに買うのはちょっと置き場所も考えないといけないのでなかなか買わないかもしれないですが、例えば70度で温度を維持してくれる一石二鳥な炊飯器などができれば絶対買う気がする(笑)。

 いずれにしても、料理はますます健康志向になるのかなと思います。ジャンクで不健康なお料理は、いくらその時はおいしく感じたとしても、もう若い人も食べなくなってきています。新鮮でおいしく信頼できる素材を選ぶことや、それをシンプルに調理して食べる。そういうのがどんどん当たり前になっていくと思います。

――今回、『あるものだけで 10分作りおき』を出されたそうですが、そのおすすめポイントやレシピを教えてください。

てんきち母 今まで「作りおき」にいいイメージがなかった方にこそ、手に取ってほしい本です。特に2章の「変身作りおき」は、これが冷蔵庫に入っているだけで心に平安が訪れます。忙しい現代人の食生活をサポートしてくれる、これからの常識になるかもしれません。今、ちょっと大袈裟に言いました、すみません(笑)。

 まず、作ってみてほしいのは、1章から「手羽元のエスニック煮」「豚バラとニラのピリ辛春雨炒め」「中華っぽいおから煮」。2章から「鶏むね肉のしっとりソテー」「ゆで鶏」「塩そぼろ」。3章から「大根のニンニク醤油漬け」「白菜の塩ツナ煮」「千切りジャガイモのきんぴら」。あたりでしょうか。たくさんありすぎてすみません!