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 中溝社長と刑務所の面接室で初めて面会した際に、岸田受刑者は「家族には顔向けできない、頼ることもできない」「地元にも二度と帰れない」と話したという。

 「しゃべり方も考え方も25歳とは思えないくらい幼いのですが、同時にしっかり罪と向き合っているとも感じました。でもここで俺が手を差し伸べず、家族にも頼れなければ、行き着く先は生活のために再び犯罪に手を出すことかもしれない。面会を重ねる中で、彼は変われると確信できたので、出所したら採用することを決めました。『お前のおやじになってやる』『早く出ておいで』って励ましています」(中溝社長)

 

「同僚に対して怖い感情がなかったと言えば嘘になります。でも…」

 中溝社長の更生支援の活動を社員はどう思っているのだろうか。一般的な求人サイトに応募して入社した沖田和幸さん(仮名、30代)はこう話す。

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「私は犯罪とは無縁な人生で、最初は同僚に対して怖い感情がなかったと言えば嘘になります。でも、話してみると普通の人間なことがわかり、今は仲良くさせてもらっています。

 彼らがかつて犯した罪の被害者が『なんで犯罪者が幸せに生きているんだ』と憤ることもあると思うのですが、受刑者が更生することは未来の被害者がいなくなることでもあると私は思うんです。だから社長が言うように、罪を犯した人が幸せになるため、というか、普通の生活ができるよう支援をすることには社会的な意義があるんじゃないでしょうか」