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《暴力団トップの脱税を決定づけた“山中メモ”》工藤会の金庫番はなぜ記録を残したのか「ヤクザはシノギに関するメモは取らないが…」

2023/01/26

genre : ニュース, 社会

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小さな手帳に書かれた「25(5)」の意味とは?

「ある事件でヤクザの若い衆を逮捕して、ガサ入れしたところ、小さな手帳を押収した。そこにはスナックの店舗名の略称のような文字のほかに、『25(5)』といった数字が細かくたくさん書いてあった。『数字の意味について説明しろ』と追及したところ、『25は毎月25日、(5)は5万円という意味だ』と自供した。このようなメモを押収することは珍しいので、事件としてよく覚えている」(同前)

写真はイメージ ©AFLO

脱税事件で懲役3年、罰金8000万円の実刑判決

 一方、同様にメモを残していたことが裏目に出て「指定暴力団トップの逮捕」につながったのが工藤会だ。資金の詳細な流れが書き留められていたことから、トップである総裁の野村悟が脱税で逮捕され、のちに実刑判決が下されたのだ。

 北九州市を本拠地とする工藤会は、暴力団対策法に基づく国内で唯一の特定危険指定暴力団である。九州北部から山口県の一部に勢力を及ぼしており、この地域で建設工事などが行われれば、ゼネコンにあいさつ料などを要求していたほか、スナックなどの飲食店からは、みかじめ料を徴収していた。

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 野村をめぐっては、1998年2月に北九州市で発生した元漁協組合長の男性射殺事件や、2012年4月に同市で起きた元福岡県警警部銃撃事件など、4事件について野村の関与があったとして、福岡地裁が2021年8月、殺人罪などで野村に死刑判決を言い渡した。

 そして、この判決に先行して、野村は2018年7月に福岡地裁から、脱税事件で懲役3年、罰金8000万円の実刑判決が言い渡されていた。この事件で同時に審理されていたのが工藤会の金庫番だった最高幹部の山中政吉で、懲役2年6月の実刑だった。