不動産取引や金融関係へ不当な介入をしたり、繁華街の飲食店から「みかじめ料」を徴収するなど、暴力団は組織維持のために「シノギ」と呼ばれる資金獲得活動を行っている。暴力団側がこうした活動を水面下で続ける一方で、警察当局としては資金源の根絶こそ暴力団を追い詰める最も有効な手段として彼らのシノギに目を光らせる。
一進一退の攻防のなか、暴力団は、活動の実態をつかませない対策のひとつとして、「シノギに関するメモは取らない」(首都圏に拠点を構える指定暴力団の幹部)のだという。ここでは、メモをめぐる暴力団組員たちの経済活動にスポットライトを当てる。
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“表向きは存在していない”ヤクザのメモ
前出の指定暴力団幹部が続ける。
「ガサで押収された物から余計な詮索を受けないように、普段からメモの類は取らないし、仮に書き留めてもカネの徴収が終われば紙は破って捨てる。組織の若い衆にもメモを取るなと指導しているし、事務所内には不必要なものは置かない。ヤクザの事務所には金庫があって大金が保管されているとか、拳銃を隠し持っているなどと思われがちだが、警察に付け込まれるようなものは何もない。自宅も同じだ」
ただし、“表向きは存在していない”というのが実態のようでもある。長年にわたり組織犯罪対策部門に所属していた捜査幹部OBが解説する。
「例えば、100軒の飲食店があるのに、毎月80軒分しかカネが集まらなかったとすると、徴収にまわっている若い衆が20軒分をくすねていたというケースもないことはない。こうした漏れがないよう、最高幹部クラスが厳重に管理しているはずだ。なかなか尻尾を掴ませてはくれないが…」
そんななか、メモの押収に成功して、みかじめ料徴収の実態が明るみに出たことがあったという。