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 判決は、「野村は工藤会が集めたシノギのカネのうち、2010年から14年の間に自らに納めさせた約8億9000万円を税務申告せず、約3億2000万円を脱税した」と断罪。「本件収入は建設業者から継続的に供与された上納金の一部について、野村が私的に配分を受けたもので、一時所得や事業所得ではなく、雑所得だった」と認定したのだ。

上納金脱税に関し、工藤会トップの野村悟容疑者宅を家宅捜索する捜査員 ©共同通信社

几帳面に詳細を記載した“山中メモ”が決め手に

 さらに、「脱税額は多額。暴力団組織の威力を背景にした建設業者からの上納金であることも悪質。所得の秘匿は計画的で巧妙」とも批判。公判での野村の姿勢についても言及し「事実を否認して不合理な弁解に終始、反省の態度が見られない」と強く非難した。

 これまで警察当局は、暴力団組織による闇金融や不動産取引、みかじめ料など資金獲得活動について数多く摘発を行ってきた。しかし、この事件のように脱税として立件し、有罪が認められたケースはほぼなかった。当時の捜査を知る警察当局幹部は、「“山中メモ”が決め手だった」と指摘したうえで、裏事情をこう明かした。

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「工藤会の数々の事件の捜査のなか、ある時のガサ入れ(家宅捜索)で、几帳面に数字が記載されたメモが発見された。メモは山中のものだった。工藤会傘下の2次団体からの集金とそのカネが野村に上納される過程が詳細に記載されていた。克明に記録していた理由は、『親分のカネは絶対にごまかさない』という強い忠誠心からだろう。さらに、野村への上納金を少しでもごまかしたら、どのような制裁が待っているか、山中は十分すぎるぐらいに分かっていたのだろう。だから、カネの出し入れについては慎重に、そして几帳面に行っていた。ただ、この事件ではそれが裏目に出たということだ」

「鉄の結束」「血の掟」で支配されているという工藤会。忠誠心がアダとなった事件だった。(文中敬称略)