風邪を引いた。明らかに熱がある。

 数日前から発熱している次女を抱っこしていて、嫌な感覚はずっとあった。いずれ私も発熱するだろうと思ってはいたが、運悪くその日は対局日だった。

 とりあえず熱を測ると39度。夫に事情を話し、後のことは任せて再び布団に潜り込んだ。

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「体調管理も実力の内」という言葉は聞かなくなった

 3年程前から将棋連盟は感染症対策のため、発熱時には対局を延期する特例措置を取っている。それより以前は、熱があっても這うようにして対局室へ行き、盤の前に座った。盤の前に辿り着けない時には不戦敗になる。

 羽生善治七冠が誕生した1996年の第45期王将戦7番勝負第4局の2日目、当時の羽生六冠が39度の熱があったというのは有名な話だ。

 ルールはその時代に合わせて変化していて、今は「体調が悪い時には休みましょう」が当たり前の世の中になり、「体調管理も実力の内」という言葉は自然と聞かなくなった。

 少し寝て、目を開けると夫が将棋連盟に電話をしてくれたらしい。

「対局延期になったよ」

 と言いながら、自分と子どもたちの布団をリビングに移動していった。

 子どもが生まれてから、大人のどちらかが発熱すると部屋を分けて隔離される。

 ここからは私の体調が回復するのが早いか、ワンオペによって夫の体力が尽きるのが早いかのチキンレースだ。高熱も辛いが、峠を越えたが幼稚園は休んでいる、という状態の次女の相手を何日もする夫も辛い。

上田初美女流四段と及川拓馬七段の夫婦 ©文藝春秋

風邪に対する強さランキングは長女>>>>>夫≒私>次女

 再び熱を測ると40度。

 携帯中継の将棋盤を映してみても何の情報も頭に入ってこない。

 水分を取り、保冷剤を脇に挟んでやりすごす。

 子どもからもらう風邪はいつだって手ごわい。

 我が家の風邪に対する強さランキングは、長女>>>>>夫≒私>次女という感じで、まず長女が圧倒的に風邪を引かない。周りのお友達が次々に休んでいっても、家族が1人ずつ熱を出していっても、1人ケロッとしている。たまに高熱が出たと思っても、次の日には平熱に戻すツワモノだ。

 一方次女は、まだ年少さんということもあり、1シーズンに1回くらいの頻度で風邪を引く。

 風邪といえば冬のイメージがあるが、実は夏も同じ位リスクがある。かと思えば、よく体調を崩すのは10月とか、季節の変わり目だったりする。年少くらいの年齢では、風邪の心配がないシーズンはほとんどないのではないだろうか。