里見香奈女流五冠が、女性で初めて「棋士編入試験」に挑戦した。2022年は将棋界にとって歴史的な1年である。

 将棋界において、「棋士」と「女流棋士」は別の存在を指す。奨励会(正式名称は新進棋士奨励会)という棋士の養成機関を経て、四段というラインに辿り着いた者が棋士となる。一方女流棋士は、かつては女流育成会という養成機関があり、それを卒業した者。

 そして現在は研修会という機関で、B2クラスに該当する者が日本将棋連盟に申請をすると女流棋士と認められる。女流棋士は女性にしかなれないが、棋士は男女で区別はしていない。

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 しかし、初代の「名人」が誕生した1612年から400年以上が経った現在も、女性の棋士は1人も誕生していない。研修会のB2は奨励会の6級(多くの人はここから入会する)と、棋力はほぼ変わらない。つまり棋士と女流棋士は棋力に差があるのだが、近年の女流棋士の棋力向上は著しく、2020年には西山朋佳女流二冠が三段リーグで次点を取った。

 また、里見女流五冠は棋士編入試験の資格と同時に8大タイトル戦への本戦進出を決めており、特にこの2人の活躍は「女流棋士が棋士に勝つ」のを珍しくない事にした。

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多くの関心を集める「なぜ女性の棋士はいないのか」

「なぜ女性の棋士はいないのか」というテーマは、今回の里見女流五冠の挑戦で多くの関心を集めた。体力では差があるけど、頭脳には男女の差がないのに、どうして?というのが見ている側の純粋な疑問だろう。この疑問の9割9分を解決するのは「将棋の競技人口の男女比」である。

 私が小学生の大会によく出場していた20年程前、100人規模の大会でも会場にいた女子は私1人だった事は少なくない。当時の男女比率は9:1にも満たない程、将棋を指す女子は少なかった。現在は8:2か7:3程だろうか、アマ棋界では確実に女性比率が上がってきている。