今、回転するものを見るのはきついんだけど
とはいえ、子どもが元気にもみくちゃになって遊び、その結果として風邪を移し合って生活するのは自然なことだ。長女も年少の頃はそうだったし、次女もこれから少しずつ身体が強くなっていくのだろう。
夫と私はほぼ同じ位で、基本的に対局日が遠い方が病人のお世話をする。
発熱している子どもを隔離するわけにはいかないので、強い風邪はもれなく大体移るが、それもまぁ仕方のないことである。
ひたすら寝ること2日間。ようやく峠を越えて、ソロソロと家を徘徊し始めた。
高熱のあとは、ありとあらゆる筋肉が溶けたような感覚になる。久々にリビングに入ると「あっ、ママ見てー!」と姉妹に声を掛けられる。
どうやら布団で前転と後転の練習をしていたらしく、ゲラゲラと笑いながら延々と回っていく姿を見せられた。今、回転するものを見るのはきついんだけど。
以前仕事でいただいたマットレスが、とても回りやすいらしい。ありがとう昭和西川さん。素晴らしきムアツふとん。
日常が戻り、健康な日常のありがたみを嚙み締める
しかし、次女もほんの数日前まで40度あったハズなのだが、なんでこんなに元気なんだ……と思って、ふとソファを見ると、夫が見るからに疲れた顔をして座っていた。
これはまずい。ここで夫が発熱すると、風邪との戦いがさらに伸びる。おまけに夫の対局も、私の次の対局も日程が近い。
私も完全には回復していないが、それよりも優先して、夫の負担を少なくしなければならない。食器洗いや洗濯など、風邪がうつりにくそうな家事からすることにした。
結果として、夫はこの苦難を乗り切った。
金一封差し上げたい気持ちである。エライ、よく頑張った。
数日振りに家族揃って夕食を取った。寝ていた時の話を長女に聞くと、どうやら書き初めのクラス代表に選ばれたらしい。「よかったね」と言うと、「でももっと上手く書けたと思うんだよね」と言う。
もっと出来る、と思えたら、きっともっと出来るよ。
次女に話を聞くと、公園でカラスがムクロジの実をたくさん落としてくれたらしい。その実を幼稚園に持って行って、泡でソフトクリーム屋さんごっこをしたいと言う。袋を見ると、全部剝くのが大変そうなくらいムクロジが入っている。
「先生に聞いてみようね」と言うと、満面の笑みで「うん!」と言った。
そろそろお布団も元の場所に戻して一緒に寝ようか、と言うと「まだ戻したくない」と長女が泣いた。リビングで寝るという特別感が楽しかったという。
夫の「リビングは寒い」の一言で、長女の要望はあえなく散って日常が戻った。
すぐに夫の対局日がやってきて、無事に将棋会館へと向かった。
スマホで中継を確認し、私は健康な日常のありがたみを嚙み締めた。