まさに文字通りのサプライズだった。

「(キャンプメンバー振り分け表を)4度見するくらい、びっくりしました。担当スカウトとは2軍スタートかなって話していたので……」

 中日のドラフト4位・山浅龍之介捕手が、2月1日から始まる春季キャンプで1軍の北谷スタートと発表された。新人高卒野手では、2012年の高橋周平内野手以来、11年ぶりの快挙。コーチ会議で相談し、高卒ルーキーの1軍スタートを決めた立浪和義監督は「即戦力か見てみないと分からないが、経験させるという意味でもね」と大抜擢の理由を説明した。山浅のコメントも一切の偽りはなく、心から漏れた本音だろう。

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 昨季はリーグ6位と撃沈した竜。巻き返しを図るチームにとって、この“刺激”は効果的なはず。フレッシュなルーキーの新風は、キャンプイン直前となった今も楽しみの一つだ。

ドラフト4位ルーキー・山浅龍之介

おっちょこちょいなのか、冷静沈着なのか、天然なのか?

 秋田県由利本荘市出身。中学時代は、楽天リトルシニアで技術を磨いた。その後、福島の名門・聖光学院へ進学し、昨夏は同校史上初のベスト4躍進の原動力になった。文武両道で、学校の成績は「オール5」。授業中に唯一怒られたのは、バスケ漫画の『SLAM DUNK』を教科書に隠して読んでいたときだけ。18歳とは思えぬハキハキした受け答えも印象的で、新入団発表では「球界を代表する捕手になりたい」と言い切った。175センチ、82キロと、プロ野球選手としては決して大柄ではないが、二塁送球タイム1.8秒。遠投110メートルと機敏さと地肩の強さを持ち、広角に飛ばせるバットコントロールが武器だ。

 注目なのは野球だけじゃない。素顔にもまだまだ発掘できそうな魅力が隠れている。

 球場でのケータリングでは、食べようとしていたパンをトースターで焼いていたのを忘れ、隣の部屋まで焦げたにおいを充満させてしまった。チームメートの田中幹也内野手、濱将乃介内野手との夕食では、一緒にテレビアニメの『名探偵コナン』を見て謎解きしながらご飯を食べている。

 さらにミットに刺しゅうされたのは、自身の背番号「57」ではなく、なぜか「32」。おまじないが大好きで「高校時代からのラッキーナンバーだから」という理由で刻み込んでいるのだそう。4歳上で亜細亜大の主将も務めた田中の部屋に行き、いきなりYouTubeを見ながら素振りを始めるなんてことも……。おっちょこちょいなのか、冷静沈着なのか、天然なのか? 球場で顔を合わせれば、こちらより先に大きな声で元気にあいさつしてくれる好青年なのは間違いない。田中も「亜細亜なら絶対アウトです(笑)。先輩のことを舐めてます。でも、可愛いですよ」と話すように、同期からも愛されている。