昨年、ワールドカップの解説を務めたことで再び元サッカー日本代表の本田圭佑選手に注目が集まっている。長年本田圭佑を取材してきたスポーツライターの木崎伸也氏はその反響をこう語る。

「W杯直後にYouTubeで生配信をしたのですが、同時接続が10万人にもなり、スーパーチャット(投げ銭と共に送られるメッセージのこと)も読み切れないくらいたくさん寄せられました。中には彼がガンバ大阪のユースに昇格できなかったことを知らなかったり、『どうやってプロになったんですか』という質問を送ってくる人がいたり、新しく彼を知った若い世代が興味を持ってくれているんだなと感じました」

ABEME TVで務めた解説が反響を呼んだ ©JMPA

 本田選手は現役の傍ら、2012年からサッカー教室を運営。2017年には自身が代表を務めるNowDo株式会社を設立し、傘下にはプロサッカーチームのEDO ALL UNITEDを抱えている。翌年にはウィル・スミスと共同で投資ファンドを立ち上げ、投資家としても実績を積み重ねるなど、活躍の場はビジネスの世界にも広がっている。
 
 一方で2018年には日本代表からの引退を発表し、毎年のようにクラブチームを転々とするなど、選手としての本田圭佑は一時期よりもその活躍を耳にすることは少なくなった。

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 本田圭佑とはいったいどういった人間なのか。彼の経歴と共にその木崎氏の取材の裏側を語ってもらった前編に続き、後編では言動が注目を集める本田圭佑の思考について聞いていく。(前編から読む)

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本田選手が「次は解説しない」と断言するワケ

――昨年のW杯では、本田選手の解説はとても話題になりましたね。

木崎 本人にとっては意外な反応だったみたいですね。普段友達と観戦している時と同じ感覚で解説したら予想以上の反響で驚いたようです。ただ、好評だった理由もなんとなく理解できると言っていましたね。みんな、サッカーのことを難しく考えすぎていたんじゃないか、と。戦術の理解も大切ですが、もっと基本的な点を取った・取られたで喜んだり悔しがったりするのが本来の楽しみ方だというのが伝わったんでしょう。

解説らしからぬ発言は本人のツイッターでも話題になった(本人のツイッターより)

――確かに、スペイン戦で三笘選手がゴールラインぎりぎりで折り返したシーンで、判定に一喜一憂する本田選手の姿はまさにテレビの前の視聴者と同じでした。

木崎 決勝戦で「アルゼンチン応援していいですか?」なんて普通の解説者はいわないですよね。でも、そうやって自然体で楽しむことが視聴者にも広く共感を呼んだんだと思います。

――ただ、あれだけ好評だった解説も「次はしない」と公言しています。

木崎 もともと、ABEMAの解説も投資家としてお世話になって藤田晋氏たっての依頼で実現したんです。それに、本田選手は今、「監督としてW杯で優勝する」というのを目標にしていますから、W杯に監督として出場していると解説している暇なんてありません。一方で、久々にしっかりサッカーの試合を観たことは楽しかったようです。「今のサッカーはこんなふうに変化しているのか」と指導者として気づくことも多かったと思います。