――自分だったら絶対に食べてしまいますね。
木崎 旅館の料理ですから、ご飯に合いそうな魚の煮つけなんかが出てくるんです。それなのに本田選手は本当に2週間白米を食べなかった。「ああ、こんなに小さなことでも一度決めたらやり遂げるんだな」と感心しました。まあ、これは冗談みたいなエピソードですが、他にも英語の勉強を毎朝2時間、約5年間も欠かさず続けていますし、目標達成のためには努力を惜しまないことは確かです。
指導者・本田圭佑の進化
――やるからには全力を出す、というのは本田選手らしい気がします。カンボジア代表のGMを務める一方で、本田選手が運営する会社NowDoが抱えるサッカーチームのEDO ALL UNITEDについてはどうかかわっているのでしょうか。さすがに時間が足りないと思うのですが。
木崎 EDOは監督がついているので、僕も当初は本田選手はあくまでクラブ会員のひとりであまり現場には関わらないんだろうと思いました。ところが、予想に反して昨年途中にGMに就任してからはかなり熱心にアドバイスを出しています。自チームの分析だけでなく対戦相手の試合を分析して監督にフィードバックするという時間も手間もかかることをしています。その結果、昨年はシーズン当初に2敗を喫して昇格が絶望的だったチームが、その後全勝して東京1部リーグ昇格を決めることができたんです。
――サッカーの指導者としても結果を残しつつある、と。
木崎 だからこそ、もっと指導者として、時間を割いてほしいと思っています。W杯の解説の経験を通して本田選手が現代サッカーの変化に気づいたと言いましたが、その後のカンボジア代表の試合が格段に良くなったんです。サッカーがモダンになったというか、守備を固めながらもパスをつないで点を取るというダイナミックなサッカーをしていました。残念ながら、12月下旬から行われた三菱電機カップ(東南アジア選手権)では目標とするグループステージ突破には届かなかったのですが、大会後に5人の選手に海外チームから移籍のオファーがありました。現地では本田GMへの評価が相当上がっていました。
――選手個人を活躍させることには成功したわけですね。
木崎 本田GM本人としては「目標に達していないから成功とはいえない」と不満げでしたが、僕としては十分成果を上げられたと思っています。マネジメント能力が高く、吸収したことをすぐに指導に活かせるので、指導者としてポテンシャルは高いと思います。だからこそフルタイムで指導に当たっている人にも負けないよう、解説はしないまでももっとサッカーの試合を観て、欧州で進化し続けているサッカーを吸収することが、彼の“大きな野望”を成し遂げることになるのだと思います。