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不正確な記事に対する反論

 たしかに、不正確な記事に対する反論は難しい。数多くの記事が量産されるなかで、当事者である皇族がいちいち確認して、ここは正しい、ここは間違っているなどと確認作業を行うのは、手間がかかりすぎるうえ、現実的に無理がある。また、宮内庁が反論すれば、逆に反論しなかった場合にその記事は正しいとのお墨付きを与えてしまうことにも繋がる。また、宮内庁の反論を契機に、そうした記事を掲載した出版社やプラットフォームに批判が向くのも、象徴天皇制の性格上難しいと思われる。それゆえ、明確な基準をもって反論という方向にはすぐには向かわないだろう。

 一方で、広報というものの役割はそれだけでもない。天皇や皇族の公務について、それを人々に知らしめることによって、象徴天皇制への理解を深めていくという課題もある。たとえば、ここ最近、秋篠宮家の佳子内親王が積極的に公務を担っている様子が、新聞やテレビ、女性週刊誌などを中心に伝えられている。しかし、宮内庁のホームページを見ても、その様子はほとんど掲載されていない。このホームページは非常にわかりにくい構造で、トップページを見て、佳子内親王がどのような公務をしているのかを知ろうとしてもなかなか情報にたどりつくことができない。

1月27日、「第71回関東東海花の展覧会」で、愛知県による特別展示を見学される秋篠宮ご夫妻と佳子さま ©時事通信社

秋篠宮家と密接に関わる役職は…

 実は、これは組織的な問題でもある。宮内庁には、長官をトップにして様々な部局が存在する。宮内庁組織の大部分を占める「内部部局」は、長官官房と4職(侍従職、上皇職、皇嗣職、式部職)・2部(書陵部、管理部)から成り立ち、長官官房には秘書、総務、宮務、主計、用度などの各課があり、報道室は総務課にある。報道に関すること、広報に関することはここが対応する。

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宮内庁の組織図(2019年5月1日現在、宮内庁ホームページを参照)

 さらに、宮内庁では「オモテ」と呼ばれる公的な問題を扱う一般事務部門と、「オク」と呼ばれる私的な問題を扱う側近部門が明確に区別されている。「オモテ」のトップである宮内庁長官が全体を統括する一方で、天皇や皇族とは、侍従職や皇嗣職などが「オク」として密接に関わる。「オク」の職員の方が、天皇や皇族と会う頻度は高く、しかもその意思をより深く知ることができる構造となっている。

 皇嗣一家の場合は、公私にわたる世話をする職域が皇嗣職であり、長は皇嗣職大夫で、皇嗣である秋篠宮と最も密接に関わる役職と言える。